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NPO釜ヶ崎 現場通信 126号

国のあたらしい基本方針(ホームレスの自立の支援等に関する基本方針)、
現行施策の継続の範囲にとどまる。

7月31日、厚生労働省から、新しい「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」が発表された。基本方針は、2002年に制定された「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」にもとづいて、1回目が2003年に定められた。今回は、法に定められた「見直し」にあたる。しかし、「見直し」と呼べるほどの変更は見られない。「現行施策の継続」にとどまり、いくつか施策の幅が広げられたくらいだ。いくつか変わった点を見てみる。

1、「自立支援センター等の設置に当たって」は、「既存の公共施設や民間賃貸住宅等の社会資源を有効に活用することを検討する」。つまり、新しく建てなくても、民間アパートなどの借上げでもいいということ。

2、「ホームレスとなることを余儀なくされるおそれのある者としては、一般的には現に失業状態または日雇労働もしくは日雇派遣労働などの不安定な就労関係にあり、かつ、定まった住居を喪失し簡易宿泊所や終夜営業店舗等に寝泊りするなどの不安定な居住環境にある者等が想定される」。ホームレスになるおそれのある者に、日雇労働者だけでなく、いわゆる「ネットカフェ難民」が追加された。

3、「ホームレス問題のいっそうの顕在化が見込まれる」原因から、「現下の厳しい経済状況」が削除された。つまり、ホームレス問題の主な原因が「不況=失業」のみではないこと。

特別清掃事業のような公的就労対策(行政施策として社会的就労を提供する)による、就労自立への土台づくりの事業は、新しい基本方針でも盛り込まれることはなかった。国が基本方針の骨格を変更しなかった根拠は、「ホームレスの数については」「平成19年調査では、その数は18,564人となっており、平成15年調査の25,296人と比べて、6,732人(26.6%)減少した」ことにあると考えられる。「4年間で4分の1減ったのだから、いまのままで十分に減っていくはずだ」ということだろうか。

しかし、他方で「平成19年全国調査(生活実態調査)の分析結果」では、再野宿層(再流入層 18%)や新規参入層(33%)も確認されるとともに、「野宿の長期化と高齢化」が指摘されている。基本方針に先立って4年間の施策評価は行われたが、「野宿生活から抜け出し、再び野宿にならないためには」「新規参入を防ぐには」どういう支援策が必要なのかを、根本から考え直すものにならなかったのは、きわめて残念だ。今までの「就労自立支援」策だけでは十分に野宿から抜け出せないのであれば、既存の福祉制度も活用して、何とか抜け出すしか方法がなくなる。そのためには、就労努力によって居宅保護を受けやすくなる年齢ラインを、せめて50歳に下げる必要がある。また内職作業・リサイクル作業のような軽易的な労働への従事やアルミ缶収集なども、申請時に就労努力として認定する、などさらに制度運用の柔軟化が必要だ。特掃は、継続した上で上限年齢を設定し、生保に移行しにくい年齢層に、より多くの日数を提供できるシステムにする必要がある。国の施策の不十分なところを、大阪府や市がどういう施策で補うのか、大阪府・市の実施計画を注視していきたい。


残暑お見舞い申し上げます
特掃では大きな事故もなく、厳しい夏を乗り切れたようだが . . . . . . .

熱中症と虫刺され
症状 人数
6/30 土 熱中症 1
7/07 月 熱中症 1
7/12 土 熱中症 1
7/16 水 熱中症 2
7/17 木 熱中症 1
7/19 土 熱中症 1
7/23 水 熱中症 1
7/25 金 熱中症 1
7/30 水 熱中症 2
7/31 木 熱中症 1
8/02 土 1
8/05 火 1
8/06 水 1
8/09 土 熱中症 1
8/15 金 1
8/15 金 虫(不明) 1
8/25 月 1
8/25 月 虫(不明) 1
8/27 水 1

今年の夏は、暑かった。どうやって、厳しい暑さを乗り切るか、スタッフ一同色々考えたところ、まずでてきたのが、ブドウ糖と塩(天日塩)を、体に吸収されやすいように、水に溶かしてみよう。ブドウ糖が水に溶けやすい砂糖に変わったが、命の水ともいえる手作りのスポーツ飲料が生まれた。命の水が現場にもちこまれた7月半ば頃から、熱中症の症状は軽くなっていった。

今年の夏は、日陰に入っても暑い。という声に、車の中にうちわがおかれた。我が身で風を起こそう。ささやかな暑さ対策だ。蜂、毛虫など虫さされは、最大の防御は近寄らないこと。といっても、熱い風にのって蜂は飛んでくる。あっ!何かに刺された、と感じたら、必ず指導員に言って欲しい。素早く、適切な応急処置が症状を軽くする。蜂に刺されてもほとんど腫れることなく、すんだ仲間が何人もいる。夏の終わり、蜂が凶暴になるといわれる。

油断大敵!気をつけよう!


. . . . 特掃事務所では、「このごろ、○○さんの姿をみかけないが、どうしたんやろう?」と
仲間のことを心配する声をきいた

Fさんが公園のテントに帰ってこない。という声を数人の人からきいた。黙って姿を消す人ではない。どうしたのだろう、と心配していると、ある人が、救急搬送された仲間のところへ見舞いにいったら、Fさんも救急搬送されて、同じ病院に入院していた。もうひとりのFさんも、やはりどこにもいない。消息がつかめないまま日が過ぎていったが、ある日FさんがNPO釜ヶ崎事務所へやってきた。救急搬送され、入院。今は天六の一時保護所にいるという。仲間に知らせてほしい、という。

特掃の就労の現場では倒れる仲間は少なかったが、今年の夏は、もしかして、知らないところで、多くの仲間が倒れているのかもしれない。7月の初め、はじめて福祉の相談にくる、といった66才のTさんは結局、福祉部門へ来る、という約束をした日を最後に特掃にこなくなった。いつも、もう少しがんばる。というTさんだったが、その日は血圧がいつもより高めで少し疲れたようすだった。本町のビルの倉庫の片隅が寝場所で、片付け仕事をしてダンボールを集めて生活していたTさんだったが・・・・今はどこにいるのだろう。

倒れる前に、福祉部門へ相談にきてください(月曜日・金曜日 朝9時から12時)。