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NPO釜ヶ崎 現場通信 132号 (発行:2009/5/11)

今年度、最終の登録者数2236人。昨年度より36人減少にとどまった。

今年度の登録も終わり、登録者数は、2236人で昨年よりも36人の減少にとどまった。アルミ缶の買取価格も1月2月にくらべれば少しは持ちなおしてきている。

しかし、今年3月の日雇仕事(現金求人数)は、西成労働福祉センターの調べでは1日平均1380人で、去年の3月にくらべて35%の減少、おととしの3月とくらべると47%の減少と、半分になっている。2月も1390人と去年より41%も少なかった。この人数は、去年の4月~6月の1日平均1600人台よりも少ない。例年仕事が少なくなる4~6月のアブレ期よりも、本来仕事がいそがしくなる年度末のほうがさらに少ないということは、どれだけ現状が厳しいかということをあらわしている。

特掃の登録者数は、年々100人~200人以上で減ってきていた。居宅保護の申請件数は、更生相談所で今年2月3月は毎月200人前後で、昨年同じ月の10倍前後、生活ケアセンターも1.5倍ほどになっている。にもかかわらず、今年の登録者数がさほど減っていないことにも、特掃がますます唯一に近い命綱になりつつある過酷な現実がうかびあがっている。

この現状が、国の緊急雇用創出基金をつかって6月1日からはじまる大阪府と大阪市の特掃事業の拡充で、少しでも緩和されることをねがうが、さらに5月に審議されている国の補正予算をつかって住まいと仕事を拡充し、シェルターや野宿からぬけだせるような対策がつくられることをねがっている。6月からはじまる新しい事業の概要図


国の「失業者への住宅手当の支給」は、第2のセーフティネットになりえるか。
大規模な就労創出とリンクさせてこそ有効に。

厚生労働省は、4月22日に「住居を失った失業者に最長6ヶ月間、住宅手当を支給することを決めた」と、読売新聞が報じていた。今年度の補正予算に約1000億円を組みこむ予定だという。「対象は、住居を失うか、失うおそれがある失業者で、福祉事務所などで面接を受け、就職活動を行なっている人。失業給付や、職業訓練期間中の生活費の給付制度など、他の制度を受けていないことなどが条件」「手当額は生活保護の住宅扶助と同額で、大阪市内のひとり暮らしの場合、最高で月4万2000円。1年間の緊急措置との位置づけだが、同省は来年度以降も継続することを検討している。」(読売新聞)

国がきびしい失業と国民の生活崩壊の状況に対して、さまざまなかたちで生活保護の前のセーフティネットを整備しようと動きだしていることは、おおいに歓迎できる。釜ヶ崎の労働者や野宿生活におかれている人たちが、どこまで利用できる制度設計になるのかは、まだ不透明だが、野宿生活にならざるをえない人たちを、なんとか減らそうという姿勢は評価できる。

ただ大阪の3月の有効求人倍率(仕事をさがしている人1人に対して、仕事のある割合)は0.59倍と、どんなに努力をしても、ほぼ2人に1人しか就職できない現実がある。これを放っておくと、結局は住宅手当の受給期間が満了する前か後かにせよ、生活資金がつきて生活保護の受給に頼らざるをえなくなるか、生活費貸付制度を利用しても返せなくなってしまう。やはり問題は、雇用の問題を民間需要だけにゆだねようとしてきた労働政策のあり方ではないかと考える。「派遣切り」などの問題も、釜ヶ崎の根本的な問題もそこにある。大規模に就労を創出することに、国・府・市とも全力をつくしてほしい。