野宿から社会再参入をめざして

技能講習で頑張る人々
 

 

 

 

 

 

 

 


 NPO法人釜ヶ崎支援機構は、大阪市から「野宿生活者能力活用事業」の委託を受け、野宿生活者を対象に「技能講習」をおこなっています。

 中高年男性が、今の高失業社会で再就職することは非常に困難です。特に、いったん住居を失い、野宿になってしまった人々は、面接しても連絡先がないなどで採用にまで結びつくことはまれです。そこで、「技術」を身に付けての自立をめざすことになったのです。

 写真は、自転車修理の技能講習の様子です。分解から組み立て、修理が身に付くよう週2回、講習をしています。講習参加者に「手当」は出ません。中には、アルミ缶を集めて生活をしながら参加している人もいます。

 何とか収入につなげようと、地域の自転車屋さんの応援を受けて、放置自転車の有料払い下げを受けたものの再生を受け持たせていただき、1台売れるごとに、再生手数料(800円)をいただくということをおこなっています。食べられる収入確保のためには、リサイクル可能な自転車を無料で入手できることが必要となっています。

 野宿生活者の自助努力の道は、とても険しく、目的地は遠く遙かかなた・・・です。


多くの人々から材料提供を受け

しかし困難な技術習得
 

靴修理講習は、出発にあたって教材(修理用の靴)がどれくらい集まるか心配されていましたが、部落解放同盟西成支部や大阪市職員組合・大阪市従業員組合の各職場分会から沢山、修理用の靴を提供していただきました。

 予定では、提供していただいた靴の内可能なものは修理してお返しするつもりでしたが、技術習得が思うように進まず、まだ果たしていません。


 

靴の修理で一番多いのは、カカトが減った部分を補修することですが、補修材を減った部分にぴったり合うように切ることが、想像以上に難しく、なかなかカンをつかむことができないでいます。

 技能が上がれば、自転車修理講習のように、修理を請けてたとえわずかでも収入が得られるようになるのですが、「日暮れて道遠し」の状態です。

天満で40年、靴修理の露天営業をなさっているところへ、見学に行ったりして、何とか修理のカンをつかもうと努力しています。

 参加手当の付かない講習で、自転車修理のようにわずかでも収入に結びつくという状況にないのでは士気にかかわる、ということで、部落解放同盟西成支部ルートで提供していただいた新品の靴を、各所のバザーに行って販売するということも始めました。

 もっと時間をかけ、毎日練習しなければ技能習得が遅くなるばかりですが、野宿生活者にはその余裕がありません。


野宿生活者の寝場所と仕事

彼らの努力と希望

大阪市内には全国で一番多く野宿生活者がいます。大阪の失業率が高いことの反映だと思われますが、西成区にはとりわけ多く密集しています。

 野宿生活者は、路上や公園などで寝起きします。通行する人や公園を利用する人や子ども、周辺住民に迷惑感が生じるのは当然ですが、野宿生活者も自分の力で寝る場所を確保しなければ生きていけません。野宿生活者の多くは、路上や公園で寝ること、公共空間を占有することがいいことだとは思っていません。他に方法がないのです。また、路上や公園での生活では、常に投石や花火をぶっけられる、ガソリンをかけられて放火され火傷を負うなどの危険にさらされています

「あいりん地区」には、大阪市が周辺住民の理解を得て設置した「あいりん臨時緊急夜間避難所」(利用可能人員600名・下から2番目の写真)があります。

 民間が設置した「大テント」(利用可能人員200名・写真上から2番目)もありますが、すでに老朽化し、建替えが課題となっています。


 

 2つの寝場所の利用可能人員の合計は800人ですが、西成区内の野宿生活者は2000人といわれています。

 

野宿生活者も、食べなくては生存できません。現金収入を得るために、アルミ缶を集めます。アルミ缶は1キロ90円から100円になります。アルミ缶集めの多くは、夜中や早朝におこなわれますが、1日集めてまわっても4〜500円から1000円が限度です。月収にすると2〜3万円前後です。


 

 

 

 

 

 

左は2年前の城東区の広報紙に掲載されたものですが、「環境美化推進事業」は現在も続いています。

2002(平成14)年度の登録者は2812人で、1日218人が就労します。登録の番号順に仕事が紹介されますから、10日に1回の割合で就労できることになります。一日の賃金は5700円、昼食代400円を引くと5300円です。月の収入は15,900円となります。アルミ缶集めと足しても、平均像として月の収入が5万円を超えることは考えられません。住宅費を省き、路上で生活して食費を優先させるしかありません。

彼らの生きる努力としての路上や公園での寝場所確保は、多くの人に迷惑感をもたらします。彼らの生きる努力としてのアルミ缶集めやゴミ袋あさりは、時としてゴミの散乱になったりして、不快を呼び起こす。

しかし、野宿生活者の生きる努力を否定することはできない。

どうすればいいのでしょうか。

野宿生活者の生きる努力に対して、社会的に有意義な仕事を提供することで援助し、生活を維持できる収入を得られるようにする、こういった考え方は、多くの人の賛同を得られるものだと思われますが・・・。

人権尊重のまちづくりには、野宿生活者への視点も欠かせないものだと思います。ご理解、ご協力、ご支援をよろしくお願い致します。