「ヒッピはヤッピになれるか」を考える会殿

(株)テレビ東京常務取締役
人権・放送倫理委員会委員長 倉益琢眞

1994年1月度(1月20日開催)「人権・放送倫理委員会」報告

〜主に「浅草橋ヤング洋品店・ヒッピはヤッピになれるか」コーナーの差別性について〜

1。報告(倉益同委員会委員長及び同番組伊藤成人プロデューサー)

イ。昨年、断続的に放送した「浅草橋ヤング洋品店」の中のコーナー企画「ヒッピはヤッピになれるか」に対し、主として大阪釜ヶ崎で組織された「ヒッピーはヤッピになれるか」を考える会から、その差別性について指摘があった。 指摘の内容は配布した資料の通りである。 (「ヒッピはヤッピになれるか」を考える会から、テレビ東京「浅草橋ヤング洋品店」制作担当者宛ての文章を配布して読み上げた)

ロ。この文書をもとに、1993年、5回にわたって「ヒッピーはヤッピーになれるか」を考える会と話し合いが行われた。(うち2回は全体集会)当方出席者は、倉益、伊藤及びテレビ大阪新美編成部長である。

ハ。この5回の話し合いの結果、テレビ東京から同会あてに別紙の通り謝罪文を送り最終的には、別紙のような「終結に当たっての確認書」を取り交わした。

2。以上の経緯及び話し合いの内容を報告した後、同コーナー5回分の試写を行ない討論に入った。

3.討論内容概要

テレビ東京を代表して話し合いを行った倉益・伊藤の対応及びテレビ東京からの謝罪文の内容、終結に当たっての確認書に対し、意見及び異議のある者は発言してほしい。

〜製作者側に人は見かけによって差別してはならないという意図があったとしても、このバラエティー番粗の中では、明らかに「ヒッピーとヤッピ」を対比させて笑いをとる構図であり、それ自体に差別性を指摘されても仕方がないし、まさに差別だ。

〜いわゆる社会的な弱者に対し笑いが向けられるという事自体が不愉快だ。ジャーナリズム本来のの使命は、さまざまな権力に対して、そのチェック機能を働かせることではないか。

〜「ヒッピはヤッピになれるか」を考える会から指摘されている通り、酒やタバコをつき出して出演依頼をする、散髪させたり、入浴させたりするシーンは、野宿労働者とはこういうものだという差別概念から発しているのは明らかだ。

〜あまりに自己規制をしていると、危ないものにはさわるなという風潮にならないか。

〜テレビにはさまざまなジャンルの番組があり、よくディスカッションしたテーマで、最もそれにふさわしいジャンルの番組で取り組めば良いのではないか。

〜古典といわれているいくつかの物語、たとえば「乞食と王子」「みにくいあひるの子」など、また最近のアメリカ映画の「大逆転」は、図式として今回と同様の差別という事にならないか。

〜基本的には、昔からの階層で人を評価するという点では差別であるかもしれないが、第一、金持ちになること、お姫さまや王子さまになる事が人間の最高の幸せと決めつける事自体に問題があるのではないか。

〜時代自体も変わって来ていると思う。まず平等な価値観から物事を考えるというところから発想すべきではないか。

〜ただ、逆境にあっても、きれいな心をもっていれば救われるという説話の教育的な部分を見落としてはいけない。

〜今回の企画について、担当者は事前チェックをしなかったのか。

〜製作者側 からの企画について、番組担当者内で賛否両論を含め、さまざまな議論を行った上、企画実施した。しかしながら、基本的な認識について誤りがあったことが、今回の指摘の経緯の中でこのように(別紙のように)明らかになった次第である。

〜そうした企画については、番組担当者内部だけの判断ではなく、全体の議論に上げるべきだ。

〜製作者自身にある差別意識について、今回を機に各々が厳しく問うべきだ。

討論後、釜ヶ崎日雇い労働者の現状をルポした93年12月26日放送のテレビ東京「ニュースThis Evening]を試写し、認識を促した。

4.ここ数年新聞でとりあげられた差別問題の報告 (別掲コピ)

部落差別、障害者差別、先住民族差別、外国人差別、女性差別等あらゆる分野に差別が存在し得る事の自覚を再確認した。

なお、この「人権・放送倫理委員会」での報告及び討論要旨は、その後、報道局、スポーツ局、演出局、パーソナリティー室等、番組制作関連セクションの幹部会に倉益委員長から報告し、全局員への徹底を指示した。

また、差別かどうか、議論を要する場合には、どんなことでも個人的判断にのみ頼らず、当委員会で検討を行った上で結論を出すよう申し合わせた。

人権・放送倫理委員会は次の各部署の委員によって構成される。

社長窒 /総務局 /営業局 /企画室 /事業局 /ソフト開発局 /編成局 /ネットワーク局 /報道局 /スポーツ局 /演出局 /パーソナリティー局 /送出技術局 /製作技術局 /人事局 広報室 /

以上

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