『大阪市における野宿者死亡調査』
凍死・餓死は2月に集中/西成区が最多
先月の「現場通信」(第40号)で、大学の先生達がまとめた野宿者死亡調査の結果を報道した読売新聞を紹介した。
先日、大阪府立大学に黒田教授を訪ね、学会で発表した資料をいただいたので、改めて紹介する。路上で亡くなった多くの仲間への哀悼を込めて。
研究は、野宿生活者の健康問題について実態把握を目的に行われたもので、2000年大阪市内で発生した野宿者の死亡の実態を大阪府監察医事務所の資料などをもとに分析している。野宿現場を確認できているか、発見時状況から野宿生活者と推測される死亡213例、および野宿予備軍として簡易宿泊所投宿中の死亡81例、計294例の死亡が対象。
死亡後の解剖は、行政解剖が141例、司法解剖24例、解剖無し129例。
死亡発見地区は、簡宿内のものを含めると西成区が138例(全体の42%)と、2番目に多い浪速区(29例)の5倍近くを占めている。
自殺は47例で、首つり(28例)、飛び降り自殺13例が目立つ。
大阪の野宿生活者の死亡は、普通の生活を送る場合より3.6倍高い
「標準化死亡比」というのはよく判らないが、全国の男性が結核で死ぬ割合(死亡率)を1とすると、野宿生活者の場合はその約44倍の高い割合で死んでいる、ということを現わすらしい。その場合、野宿者総数の数字は概数調査8,660人が基になっている。野宿生活者8,660人の中での結核死亡13人と、全国男性総数の中の結核死亡数との比較ということだ。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍での死亡は8.5倍。結核の44倍にしてもそうだが、医者にかかれば死なないですむにもかかわらず、充分な医療を受けられない状態で、野宿生活者が路上や公園で死んでいることを、数字で裏付けた調査結果といえる。
発見場所は、多くの仲間が現在生活場所としている路上・公園・河川敷・駅や地下街などであった。輪番就労に来ている仲間の中にも、仲間の死の発見者となった体験を持っている人はいるかも知れない。
異常の通報者46例は野宿生活者仲間であり、109例は通行人や運転手であったそうだから。
死ぬ前の生活状況は、テント生活者39人、布団や毛布だけで生活していたもの23人、段ボールで囲いをつくって生活していたもの19人などとなっている。
発見状況は、高度腐敗24例、ミイラ化1例、白骨化7例。誠によそ事ではない話である。
野宿は余儀なくされてするものであって、好きこのんでするものではない。普通の生活の3.6倍もの死に近い生活状態を、誰しもが一日も早く脱したいと考ている。努力もしている。働き、収入を確保し、三度三度の食事をする。畳の上で生活して、病気になれば医者にかかれる生活。
普通の生活をめざしても、個人の努力では越えがたいものもある。「ホームレスの自立支援等に関する特別措置法」はできたが、まだ動き出さない。当面、使える手だてを使い倒して生きることに専念しなければならない。
輪番就労は、仲間の願いと行動の積み重ねにもかかわらず、まだ生活を支えられるほどにはなっていない。更に要求し行動しつつ、現実的に命を守るためには、医療センター、救急車、市更相、福祉事務所、ケアーセンター、仮設避難所などを活用することに今まで以上に努めなければならない。死亡率の異常な格差を埋めるために!