野宿生活者対策考察のために
野宿生活者対策は、野宿に至る前の予防と現に野宿状態にあるものへの「救済策」の二つがセットで必要である。

*雇用・失業対策として、雇用保険給付金給付期間の延長・雇用保険給付の受給資格の無いものに対する1年間(月20万円)の貸付金制度、5000億円の雇用創出基金での雇用創出などが打ち出されている。最後の受け皿としての「生活保護法」は従前から存在している。
* 野宿生活者が集中する釜ヶ崎でも、日雇労働者の雇用拡大のために雇用創出基金を活用しての事業が実施された。しかし、予算規模に対して、野宿生活者の数が多く、短期的にせよ野宿の状態から脱し、次の生活を目指すためのゆとりをもつことができない。
* 一人5,700円の賃金で月14日働くと、79,800円の収入となる。日雇雇用保険に加入し、10日間3級給付金4,100円を受給すると、一ヶ月の総収入は120,800円となる。ちなみに大阪の生活保護は単身者で生活費82,000円と住居費42,000円。
* 雇用創出基金で6,000人分を上記計算により負担すると、79,800×6000人=478,800,000円+間接経費3割=622,440,000円。1年分は7,469,280,000円。
* 6000人を生活保護にかけると、124,000円×6000人×12ヶ月=8,928,000,000円。生活保護受給者が増えると、福祉事務所のケースワーカーの増員が必要となる。ケースワーカー一人が300人受け持ったとしても、20人の増員が必要となり、その分の人件費負担が生じる。(大阪市では65歳以上は400人、それ以下の年齢層は80人(?)担当することになっている。野宿生活者の平均年齢が55歳だとすれば、75人の増員が必要となる?。)ケースワーカーの増員問題が生保適用拡大の足かせとなっている側面がある。
* 大阪における野宿生活者の基本属性は、1999年の調査によれば、左表のとおりである。その後の3年間で、若干の平均年齢の低下と、直前職の多様化の傾向がやや強まっているといえるかもしれない。
野宿生活者基本属性
性別・1999年野宿 男性=652人(97.0%) 女性=20人(3.0%)
年齢・1999年野宿
平均年齢=55.8歳 最高年齢=85歳 最少年齢=27歳
1998年センター夜間開放
平均年齢=55.3歳 最高年齢=80歳 最少年齢=25歳
学歴・1999年野宿
新制中学=340人(51.1%) 高等学校=209人(31.4%) 大学=24人(3.6%)
直前職業・1999年野宿
採掘・建設・労務作業者=407人(66.3%) 製造・製作作業者=62人(10.1%)
サービス職業従事者=35人(5.7人)
直前産業・1999年野宿
建設業=489人(75.5%) 製造業=63人(9.7%) 卸売り小売業、飲食店=37人(5.7%)
サービス業=30人(4.6%)
従業上の地位・1999年野宿
日雇=429人(65.5%) 臨時=69人(10.5%) 被雇用不明=63人(9.6%)
被雇用常用=46人(7.0%) 経営自営=31人(4.7%)
* 大阪の野宿生活者の発生要因の大部分は、釜ヶ崎の日雇労働市場が半壊したことにある。ようするに、中高年労働者を雇用する単純肉体労働市場が大阪に不足しているから、収入の道が途絶え、路上や公園で生活しているのである。
* 雇用創出基金で3年間6000人が野宿から脱したとしても、3年後には再び野宿に戻る可能性が高い。
* 政府の計画では、5年間で500万人の雇用を創出することを目指しており、転職のための職業・職能訓練も受けやすい体制を作るとされているが、建設業を中心に長年働いてきた中高年労働者には、なおハードルが高すぎる。
* すでに野宿状態が固定化している層にとっては、なおさらである。
* 大阪の野宿生活者が利用可能な福祉資源の概略は、左図であるが、施設の増設は思うに任せず、病院を施設代わりに使う側面もある。
* 施設(自立支援センターを含め)の居室は、相部屋であり、建設業寄宿舎(飯場)や簡易宿泊所(ドヤ)が早くから狭いとはいえ個室化していることから、個室生活になれた利用者の評判が悪く、定着率を悪くしている。そのため、施設滞在中の「更生・就職」を果たせないまま施設を出て野宿に戻るものが後を絶たない。生活保護法で収容される施設や自立支援センターの基準を改訂し個室化する必要がある。
* 一般市民の野宿生活者を見る眼は、野宿の状態を「かわいそう」と思う反面、野宿に至った原因を野宿者の自己責任と見て「怠け者,自業自得」と考え、冷ややかである。特に、公園・道路の占有については、自分への権利侵害と感じ、野宿生活者の「わがまま」と見る傾向が強い。しかし、あるいはそれゆえに、野宿生活者に仕事を提供することに公費を使うことについては、反対の意見は少ない。いたって、生活保護(居宅保護)による「救済」が主流となることには反発の声があがる。
* 公共空間を占拠する野宿生活者の強制排除は、「追い立て先」の確保がない限り、いたちごっこに終わる。「追い立て」賛成する市民も、「追い立てられる人が」自分の家の隣にできる施設で生活するようなことになるのには反対する。「追い立て先確保」としての「地元調整無き収容施設建設の強行」と「野宿生活者の強制排除」をセットで実施せざるをえないが、野宿生活者と市民双方に、行政に対する不満・不信を植え付けることになるだけで、成果は上がらないであろう。
* 市民と野宿生活者の一致点は、就労対策による問題の解消であるように思える。
* 政府の「当面の対応策」で打ち出された「自立支援センター」は、隣保館・隣保施設の位置付けであり、設置・運営についての適切な根拠法がない。したがって、明確な政府予算支出の裏づけもなく、厚生労働省の恣意性にゆだねられていると言っても過言ではない。たとえば、自立支援センターから就職して自立生活に入るためには住居を確保しなければならないが、住居確保のための資金(敷金・権利金等)について、厚生労働省から大阪府社会福祉協議会の福祉貸付金制度を活用するよう指示があったものの、実施することができず、棚上げとなっている。
* 自立支援センターは、就職による自立に重点を置いて運営されているが、再就職するに当たって有利となる資格・技能の修得についての訓練機能を持っていない。職業訓練学校との連携も考慮されていない。自立支援センター入所者の中には、「市民社会」で人関係を作り、維持するのに必要な基本的な話術・振る舞いを修得していないものも多く見かけられ、建設や警備・清掃業等以外の職種への就職を困難としている。「ビジネスマナー」あるいは「接客術」の修得の上に新たな資格や技術を身につけることによって、再就職率はそれなりに高まるものと期待される。
* 自立支援センターの入所期間を3ヶ月から6ヶ月としたのは、実情にあっていなかったといわざるを得ない。短い期間での再就職をせかされるあまり、生活相談員の活動が十分になされず、メンタルケアーへの配慮は勿論、難聴や腰のヘルニア・年齢の虚偽申請などが見過ごしにされ、さまざまな行き違いの元となっている。
* 入所者は、自立支援センターとは「職をあてがってくれるところ」と過度に期待して入所するが、入所2〜3ヶ月で期待はずれであることに気づく。また、2〜3ヶ月たつころには、狭い部屋に二段ベットを入れての集団生活にも嫌気を感じるようになる。短期での自主退所が多い所以である。具体的・確実な展望を入所者がもてるようなメニューが提示されていることが必要である。そのためには 下に掲げたようなシステムの構築が望まれる。
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下に掲げたようなシステムを短期間に構築するのは、既存の施策の活用だけでは困難であり財政措置を伴う立法が求められるところである。大阪府議会・大阪市会は議会決議をあげているし、大阪府・大阪市も立法を国に対して要望としてあげている所以であると考える。
