野宿者簡易アンケート集計結果98629日午後6時〜630分実施)

センター夜間解放にともない乾パン配布が午後7時から行われている。乾パンを受け取る労働者は午後5時にはすでに列をなしている。連日1,800名を越えるその集団の性格を把握するために、聞き取り調査が企画され実施された。

午後6時にセンターのシャッターが一時閉まるまでに、乾パンや毛布などを運び込み、645分に一部のシャッターが開いて、ブルーシートを敷く作業が始まるまでの時間を利用して、夜警メンバーによって聞き取りが行われたので、全数調査というわけにはいかず、列の先頭から聞き取りを始め541名の聞き取りに留まった。列の先頭部分と他の部分とに性格の違いがあるかどうかは検証できないが、おおむね大佐はないものと思われる。聞き取りの項目は次のとおり。

  1. 年齢 2.釜ヶ崎に来て何年か 3.野宿をして何ヶ月か 4.主にどこで寝ているか

単純集計

  1. 年齢
  2. 年齢

    30-34

    35-39

    40-44

    45-49

    50-54

    55-59

    60-64

    65-69

    70-74

    不明

    合計

    人数

    3

    17

    30

    83

    104

    136

    125

    33

    6

    4

    541

    Image45.gif (8262 バイト)

    Image44.gif (9624 バイト)

    平均―54.7歳・中央値―56歳・最頻値―60歳・最小―32歳・最大―73

    上の棒グラフと円グラフは、5歳きざみで作成した今回調査の年齢構成である。

    上の棒グラフと折れ線グラフを組み合わせたものは、あいりん職安の白手帳の年齢構成(973月末現在)と比較したものである。平均年齢は53.5歳で、今回調査より1.2歳若い。

    今回調査の方が、45-59歳の割合が低くなっているものの、全体としては、似通っているといえよう。このことは、野宿を余儀なくされる層が特定の層(高齢・病弱)ではなく、釜ヶ崎日雇労働者全体にわたっていることを窺わせるものであるといえよう。仕事の落ち込みと照らし合わせて考えれば、当然といえる調査結果ともいえる。

  3. 在釜年数
  4. 在釜年数

    0-1

    1-5

    6-10

    11-15

    16-20

    21-25

    26-30

    31-35

    36-40

    41-45

    46-

    不明

    総合計

    人数

    55

    113

    104

    57

    90

    19

    48

    18

    25

    6

    1

    5

    541

    平均―14.2年・中央値―10年・最頻値―10年・最小―0.5年・最大―51年

    在釜年数は正規分布(平均値を中心として左右対称)を示しておらず、それぞれの山に特有の性格があることを示している。それぞれの山の特質を説明するものは、釜ヶ崎の歴史であり、日本経済の動向である。

    1960年以前の第一次釜ヶ崎拡大期の山、1970年以前の万博準備期の山、1980年以前の景気対策としての公共投資拡大期の山、そして、バブル期と震災復興期。

    だが、ここ数年は、仕事量との関係が逆転しているように思える。釜ヶ崎で仕事が減少し続けているここ3年間に127人もの増加を見ている。1年未満も1割存在する。

    もはや釜ヶ崎に仕事を求めてくると言うことではなく、世間一般の不況が厳しく、「一般水準」の生活を維持できなくなった層が、生きる余地を求めて、身の置き所も求めて、釜ヶ崎へと集まり始めていることを示しているように見える。

    2日

    4日

    5日

    7日

    12日

    20日

    1ヶ月

    2ヶ月

    3ヶ月

    4ヶ月

    5ヶ月

    6ヶ月

    8ヶ月

    9ヶ月

    10ヶ月

    1

    1

    1

    2

    1

    1

    14

    8

    7

    3

    1

    9

    1

    1

    2

    1年未満の内訳は上記の通りである。一ヶ月までは21名、2ヶ月以上は32名で、センター夜間開放による影響と説明することはできない。

  5. 野宿期間
  6. 野宿期間

    0-1

    1-6

    7-12

    12-24

    25-36

    37-

    不明

    総合計

    人数

    59

    376

    44

    18

    14

    15

    15

    541

    平均―7.2ヶ月・中央値―2ヶ月・最頻値―1ヶ月・最小―0.5ヶ月・最大―240ヶ月

    野宿期間については、多くの説明を要さないほど傾向ははっきりとしている。更にはっきりとさせるために、3ヶ月、つまり今年の3月以降野宿生活に入った人数を示せば374名である。

    また、1ヶ月未満については以下の通り。

    野宿期間

    1日

    2日

    3日

    4日

    5日

    7日

    8日

    9日

    10日

    人数

    1

    1

    3

    5

    2

    8

    1

    1

    8

    野宿期間

    12日

    14日

    15日

    17日

    20日

    21日

    22日

    25日

    人数

    1

    10

    1

    1

    10

    2

    1

    1

    日々野宿を余儀なくされる層が増え続けていることを示している。

    4.野宿場所

    野宿場所

    人数

    あべの

    40

    なんば

    25

    釜ヶ崎周辺

    311

    四天王寺

    26

    日本橋

    90

    その他

    46

    不明

    3

    総合計

    541

    釜ヶ崎周辺で上がっている地名は、「山王町・鶴見橋・花園・センター」など。

    その他で上がっているのは「恵美須町駅・津守・玉出・大阪城・ドヤ」など。

    ドヤが上がっているのは、「主に寝る場所」という問いかけによるものと思われる。野宿はしているが、月の半数近くは、アブレ手当や仕事に就くなどの収入でドヤに宿泊する層が含まれていることを示すものである。ここでも、「現役」と「野宿」の差がなくなってきていることが窺われる。

  1. 来釜年齢(推定)と在釜年数

在釜年

来釜年齢

0-1

1-5

6-10

11-15

16-20

21-25

26-30

31-35

36-40

41-45

46-

(空白)

総計

0-14

2

2

15-19

1

1

6

3

1

12

20-24

1

1

1

9

4

11

1

28

25-29

1

4

3

6

4

9

10

4

41

30-34

8

7

6

24

4

21

4

4

78

35-39

4

7

21

16

24

7

7

86

40-44

5

15

19

15

28

2

84

45-49

12

27

32

13

6

1

91

50-54

9

24

11

3

2

49

55-59

15

19

6

40

60-64

7

6

1

14

65-69

3

4

7

(空白)

2

2

5

9

総計

55

113

104

57

90

19

48

18

25

6

1

5

541

 

年齢から在釜年数を差し引いて来釜年齢を求め、あらためて在釜年数とクロスさせたものが上の表であり、下のグラフである。

55歳以上の高齢で釜ヶ崎に来た人々の総てが、在釜年数10年未満であり、60歳以上では5年未満であることが、釜ヶ崎の新しい問題(日本の高齢社会化の問題)を指し示している。

6.簡単なまとめ

629日に列を作った人々の8割強が今年に入って野宿を余儀なくされている。その半数近くは、10年以上釜ヶ崎で働き続けてきた。彼らに必要なのは、明らかに仕事である。それが満たされなければ、福祉対策による寝場所と食が必要である。野宿期間の集計から見て対策は急を要する。

釜ヶ崎の労働者の失業問題と労働者の高齢化にともなう問題とがここに見える。それが主要な問題点である。

その上に、新しい問題が加わってきている。在釜年数と野宿期間が同一あるいは接近した層の出現である。これは、日本全体の高齢化の問題であるし、大不況のもたらした問題でもある。今回の調査では大きな比重を占めていないが、拡大しつつあることを示している。

これは釜ヶ崎の問題ではないが、今や釜ヶ崎で解決が迫られている課題となった。

これまでの説明は、回答者の範囲に留まるものかも知れない。列の先頭部分と中段部分、後段部分がほぼ均質であるとすれば、少なくとも1500人について説明するものである。さらに、5月下旬に確認された3,422人についても説明するものであるかも知れない。

野宿期間

在釜年数

1ヶ月未満

6ヶ月未満

1年未満

2年未満

3年未満

3年以上

(空白)

総計

0-1

10

40

2

3

55

1-5

13

75

13

4

4

3

1

113

6-10

7

82

5

3

1

3

3

104

11-15

8

44

1

2

2

57

16-20

10

56

8

4

5

6

1

90

21-25

2

14

2

1

19

26-30

6

32

5

2

1

2

48

31-35

2

8

4

1

2

1

18

36-40

1

18

2

2

1

1

25

41-45

5

1

6

46-

1

1

(空白)

1

1

3

5

総計

60

375

44

18

14

15

15

541

 

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