『別冊フレンド問題』の取り組み報告

  西成区人権啓発推進会事務局 綿貫信和

司会 ありがとうございました。それではさっそく、提案,いうことでやっていきたいと思います。

フォーラムというのは,広場ということで,みんなが自分の意見を持ち寄って一つのものを作っていく,そういうことであります。

はじめには「別冊フレンド」,この8月号に「西成差別事件」についての講談社からのお詫びの「読者の皆さんへ」というのがでておりますが、

このいきさうをめぐって、「西成差別事件」について,西成区人権啓発推進会からご報告をお願いします。報告は,ざっと20分ほどとなっております。よろしく。


綿貫 皆さん、こんにちは。紹介をいただきました西成区人権啓発推進会事務局の綿貫です。

只今から、西成区人権啓発推進会の「別冊フレンド問題」の取り組みについて報告させていただきます。

今年(1996年)の2月13日に講談社が発行した少女向けマンガ雑誌「別冊フレンド」3月号に連載中の「勉強しまっせ」の中で

西成に*印を付けて「大阪の地名。気の弱い人は近づかない方が無難なトコロ」と,

西成あるいは西成区を説明する箇所があったんです。

これを中学生が見つけて先生に報告し、そして人権啓発推進会に連絡があり、2月21日付けで講談社と著者に対して区PTA協議会を始め部落解放西成区民共闘会議等と一緒になって抗議文を出しました。

その後、3月21日と5月27日の2回にわたって著者と講談社に抗議の集会を持ちました。

実は「勉強しまっせ」を描いているのは、みやうち紗矢さんといって茨木に住んでいる大阪の人なんですが、
若い頃、西成区の花園にあったライブハウス・エッグプラントに通っていて、西成が非常に好きになった、
それで西成を題材にしたマンガを描きたいということで「勉強しまっせ」を描いたんですね。

そこで、注釈を付けたのは誰やという私たちの追求に対して、付けたのは若い副編集長ということでした。

そして、何でこんな注釈を付けたんやについては、

「勉強しまっせ」の取材で副編集長が大阪へ来たときに、通天閣や新今宮周辺の界隈を歩いていて路上で寝ている人を見た、そのとき怖かったと。

その怖かったと思った背景は、どういうとこから生まれたんやと言いますと、釜ヶ崎騒動のテレビの取り上げ方,新聞の取り上げ方を見て怖いと感じた。

それと路上で寝ている人が一緒になって「西成怖い」と、そういう意味では何のためらいもなく*印を書いた、ということなんですね。

 人推会の二回の抗議集会の中で明らかになったんは,“西成”という使われ方には三つあるということなんです。

西成という場合、三つ。

一つは、あいりん・釜ヶ崎を指して西成といいます。

二つ目は、同和地区を指して西成といいます。

三つ目は、西成区全体をさして西成といいますが、あまり良い使われ方はしないんですね。

“西成”に対する偏見っていいますか予断と偏見は、
これは講談社との話し合いの中でも明らかになったんですが、マスコミ「ことさらに“西成”に事件性を持たす」かのような偏見に満ちた報道をする、
そのことが“西成”に対する偏見なり差別を生み出しているということなんですね。


昨年の4月だったんですけが、
鳥取県米子市の方から娘さんの結婚に際して,相手方が西成区に住んでる人なんですが、
文面が「西成区は色々な人種が住んでおられ、大変心配しています。どうぞ、よい返事を下さい。」といった
身元調査依頼の手紙が区役所に届きました。

その後、事情聴取の中で何であんな手紙を書いたのかと聞いたら、

お母ちゃんは,本人同士が好きやったらそんなことせんでもエエと思てたけど、義母から「西成区は部落の人が多いので有名、つてがあったら調べてもろたら」といわれ、

友人から「西成は大変なところ」といわれて身元調査をしたことが分かったんです。

さらに事情聴取で明らかになったことは、
鳥取県米子市に廃品回収業を営んでおられる方が沢山住んでいる町があるんです。隣が同和地区ですが、
そのお母ちゃんが30年前の若い頃、その町の人と交際してて、
友人から「あんた、あそこの人と結婚でもしたら大変なことになるデェー、離婚でもしたら殺されるデェー」といわれたことを思い出し、

それが、娘さんから西成には“あいりん”というとこがあって怖い・危ないところということを聞いた、それが結び付いて、“あいりん”怖い・A町怖いということ、それに同和地区は怖いが結び付いて身元調査になったということなんですね。


“あいりん”怖い・西成怖いは何処から来たんかというと、

先程から報告しているように、テレビなり新聞なりの報道なんですね。「ことさらに“西成”に事件性を持たせる」かのような報道、そのことが西成あるいは西成区に対する予断と偏見を生みだしていると思うんです。

「別冊フレンド問題」から一週間目と記憶してるんですが、ある殺人事件がありまして、確か死体が都島区の方で見つかったんですね。

その時の新聞の見出しが「被害者はかって西成に在住」となっていましたが、記事を読んでみますと西成は住んでいただけで事件とは全く関係ないんですね。

記事で訴えたかったのは“女子大生“やったんです。普通なら“被害者は女子大生”と付けますよね、見出しには。

関係ないのに、わざわざ“西成”という字を前面に出してくる。

ある人から聞いたんですが、夕刊フジとかの夕刊紙がありますね、見出しに“西成”があるとよく売れるということらしいです。

こんな具合に“西成”を使って儲けるというか、こういう記事・報道の在り方というのが西成や西成区に対する予断と偏見を全国的にバラまいているんですね。

特に「別冊フレンド」は全国に35万部売られているらしんですが、全国津々浦々に“西成”がバラまかれたんですね。

3月21日に抗議文を出して、講談社は4月号で「お詫びと連載中止のお知らせ」を載せたんですが、
何で中止をしたんかを全く書いていない、それもほとんどが漢字なんです。ひらかなは打ってあるけど意味の分からない“ただのお詫び”だけなんです。

これは、また問題が起こるなと思とったら案の定あった訳です。

別冊フレンドの*注を見つけた中学生、今は高校一年生ですが、

「あんたどこの中学出身や」「〇〇中学や」「“勉強しまっせ”をやめさせた中学か」と「西成やからやめさせよった」というように西成区以外の高校生や中学生に思われているとか、

またミーツ・リジョナルという食べ歩きの雑誌で私たちの抗議について「そんなしよーもないことやめとけ」といったような文章が書かれたんです。

これは、結果的には講談社の不十分な「お詫びと連載中止のお知らせ」が生み出した二次的な問題なんですね。

“西成”に対する差別意識というか予断と偏見は、西成区民とか西成区に勤める人が持っているんではなく、他の区に住んでる人,あるいは府下・他府県の人が持つ意識であって、

「別冊フレンド問題」は西成区だけの、あるいは一過性の問題ではなくって、大阪市全体の、全国の問題であると捉えています。

その意味からも、講談社は社長名で人推会にお詫びの文章を送ってきましたが、スンマセンだけで終わる内容ではないんです。

この12月に新聞報道というかマスコミ報道、いわゆる“西成”に対するマスコミ報道の在り方というような討論会、そういった集会をマスコミも呼んでやりたいと考えまして、ご参加もよろしくお願いし、西成区人権啓発推進会の報告を終わります。