A.生活

萩の茶屋地区にすむ子どもを「釜ヶ崎の子どもたち」とし「山王・太子」「花園」「西成・浪速」の周辺地域を一つにして、比較することにした。また設問に答えた子どものみで割合を出し、N.A(No Answer)群をはずした。


(1)どこにすんでいるか。住居の広さ

釜ヶ崎の子ども達は4.5畳以下一間のせまい住居(アパート)に住んでいるのが25%で、周辺地域12%の2倍に達する。

二間が43%と多く、周辺地域の三間54%が一番多いのと比較して一間せまいことがわかる。

これは釜ヶ崎が日雇労働者の単身者の街でドヤ街が増えるにしたがって、家族持ちの住める部屋がなくなって来ていることも原因している。

また家族持ちも狭い「日払いアパート」に暮している釜ヶ崎の特色がよく現われている。狭いアパートはまた戸外での夜遊びの原因になることも考えられる。

地域 釜ヶ崎 周辺地域
割合 人数

人数

一間 4.5畳以下 14人 25% 10人 12%
4.5〜6畳 6人 11% 12人 15%
二間 24人 43% 15人 18%
三間 12人 21% 44人 54%

56人 100% 81人 100%
N.A. 12人 114人

(2)朝起きる時間と夜寝る時間

釜ヶ崎の子の58%は午前8時までに起き、周辺地域の子は8時以降が56%で、寝る時間は10時〜12時に両地域共に集中している。

朝起きる時間 地域 釜ヶ崎 周辺地域 夜寝る時間 地域 釜ヶ崎 周辺地域
割合 人数 人数

割合 人数

人数

6時前 4人 6%

7人

8%

PM8-9

4人

8%

6人

5%

6〜7時 15人 22% 10人 11% 9-10 18人

27%

31人 29%
7〜8時 20人 30% 22人 25% 10-12 30人

45%

52人 49%
8時〜 28人 42% 50人 56% 12〜 14人

21%

18人 17%
67人

100

89人

100

66人

100

107 100
N.A. 1人   25人   N.A.

2人

  114  

聞きとりの中から朝早い家庭の職業をとり出すと次表のようになる。子どもは親の生活に合せているといえる。

5時起床 バラシ
(コンクリートの仮枠はずし)
6時起床 運送業
7時起床 大工
鉄筋工
クリーニング
豆腐屋

釜ヶ崎の父子家庭5軒、母子家庭1軒の寝る時間は午後11時〜12時と比較的遅い。 2〜3の事例を示すと、

@母死亡、父子家庭で6畳一間のアパートで、12時ごろに寝る
A父、母共酒屋づとめで市営アパートにすむが12時に寝る
B母子家庭で母は飲み屋で働き午前2時ごろ帰宅する。子どもも朝9時ごろに起き、母親の時間帯に合せている。


(3)何時ごろまで外で遊ぶ

「みおつくしの鐘」は10時に鳴る。家へ帰ろうという社会常識の門限の最高時間を示しているという。 その10時以降も戸外で遊んでいるのは、釜ヶ崎14%で周辺地域の7%の倍になっている。

最高の数値は釜ヶ崎6〜7時33%、周辺地域5〜6時で39%となっており釜ヶ崎は夕食時間が1時間周辺地域より遅い。

夜の12時以後戸外で遊んでいるのは、20才までの中卒の青年達であった。家は狭くてむし暑いという状況も反映しているが、たむろして話し合う若衆宿的な施設の必要性が痛感させられる。

    地域
時間

釜ヶ崎

周辺地域

人数

人数

PM5時まで 3人 5% 8人 8%
5〜6時 10人 16% 41人 39%
6〜7時 20人 33% 27人 26%
7〜9時 12人 19% 16人 15%
9〜10時 7人 12% 5人 5%
10〜12時 4人 6% 5人 5%
12〜 5人 8% 2人 2%
61人 99% 105人 100%
N.A. 7人 10人

(4)外で遊んでいる時間

最大値は釜ヶ崎の子どもは8〜10時間の23%。

周辺地域の5〜6時間20%に比べ、約2時間戸外で遊ぶ時間が多い。

ではどこで遊ぶのか。公園は金網が張られていて入れないので、ゲームセンターへいくケースが多い。朝8時から入りびたっている子もいる。

学校のないとき
     地域
時間

釜ヶ崎

周辺地域

人数

人数

0時間

3人 6% 1人 1%
1〜2時間 3人 6% 10人 11%
2〜3時間 5人 10% 9人 10%
3〜4時間 2人 4% 4人 5%
4〜5時間 2人 4% 15人 16%
5〜6時間 7人 14% 18人 20%
6〜8時間 8人 16% 12人 13%
8〜10時間 12人 23% 14人 16%
10時間以上 9人 17% 7人 8%

51人 100% 90人 100%
N.A. 17人   74人  

<学校のある時の外で遊ぶ時間は>

5時間以上戸外で遊ぶ子どもは釜ヶ崎では20%、周辺地域では12%で、釜ヶ崎は比較的多い。 外で全く遊ばない3人の子どもの中、2人は子どもの家で遊んでおり、1人は塾通いであった。

     地域
時間

釜ヶ崎

周辺地域

人数

人数

0時間
0〜2時間 14 13 17
2〜3時間 13 26 20 26
3〜4時間 16 19 24
4〜5時間 16 12 16
5〜6時間 14
6時間以上

50 100% 78 100%
N.A. 18 36

(5)家で遊ぶ時間は

家で遊ぶ時間は釜ヶ崎の子どもの76%は3時間以内、周辺地域は77%が4時間以内で、約1時間周辺地域の方が多い。

学校のないとき
     地域
時間

釜ヶ崎

周辺地域

人数

人数

0時間 17 10 13
0〜1時間 10
1〜2時間 11 28 14 18
2〜3時間 11 28 13 17
3〜4時間 18 15 19
4〜5時間 10
5〜6時間
6時間以上

39 100% 78 100%
N.A. 29 37

学校がある時は、釜ヶ崎の子の69%が2時間以内、周辺地域は84%が3時間以内で、やはり1時間多い。

学校のあるとき
     地域
時間

釜ヶ崎

周辺地域

人数

人数

0時間 10 31
0〜1時間 11
1〜2時間 11人 35% 27人 34%
2〜3時間 26 33
3〜4時間 25 10
4〜5時間 1.5
5〜6時間 1.5
6時間以上

32 100% 79 100%
N.A. 36 35

釜ヶ崎の子は家で遊ばない子が31%もいる。これは遊ばないのでなく、遊べないのである。約3割の子が狭い部屋で友達と遊ぶことは出来ない。部屋数1間のみ36%という数値とほぼ合致している。


(6)地区ごとに目立つ特徴が―職業分類

子どもの回答数は225人であるが、ここでは兄弟・姉妹などの重複した数は抜いているので199人という調査数になった。

まず共働きであるが、199人のうち、そう 答えた子どもが86人あり、全体の43.2%になる。

父のみが働いているとの回答は49人、母のみが働いているとの回答は34人である。 つまり、どちらか一方のみが働いているとの回答数は83人で、これは41・7%である。

なお、この調査では、199人のうち、父子家庭が13、母子家庭が20あり、全体の16・5%を占めている。

地区別での比率を示したものが図Aである。 帯グラフ中の「父が働く」にある斜線部分は父子家庭を示し、「母が働く」にある斜線部分は母子家庭を示す。

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現在の日本の社会では共働きが当然視される傾向が強く、各地区にほぼ同じ比率、しかも最も大きな割合を占めて共働きが存在することはうなづける。

共働きに次いで、各地区とも「父のみが働く」が大きな割合を占めている。 「共働き」と父子家庭を除いた「父のみが働く」との回答は、現在の日本の社会では一応標準家庭といわれるものであるが、気にかかるのは、母子家庭ではないのに「母のみが働く」との回答が、各地区に相似た比率で存在する点である。回答票に、「父が入院中」あるいは「ケガのため、などの書き込みがあるものが2〜3あったが、もっと違う事情によるものもあるように思える。

地区別の特徴でいえば、01(萩の茶屋地区)及び04(花園地区)において父子家庭の目立つ点である。これは、両地区に母子家庭もあるにしても、労働者の街・釜ヶ崎らしい特色といえばいえるかも知れない。しかし、標準家庭を生活スタイルの基礎に置き、母子・父子家庭に対する充分な社会対応をおこなっていない日本においては、そこに生まれ、育つ子どもの上に各種の困難がおおいかぶさっているだろうことを思うのは容易である。 具体的な職業で、各地区において数の多いものを挙げると次のようになる。

01(萩之茶屋地区)父親の職業―大工・鉄筋工などの職人11人、会社員5人、酒屋4人、日雇3人。 母親の職業―店の手伝い12人、酒屋5人、ドヤ・アパート管理人3人。

02(山王・太子地区) 父親の職業―大工など職人5人、会社員4人、日雇2人。 母親の職業―喫茶店3人、内職3人、パート2人。

03(天下茶屋・鶴見橋・恵美須など) 父親の職業―大工・鉄筋工など職人8人、酒屋・うどん屋など6人、会社員6人。 母親の職業一パート5人、店の手伝い5人、内職3人。

04(花園地区) 父親の職業―手配師4人、くつや3人、日雇2人。 母親の職業―内職3人、スナック3人、食堂2人。

05(釜ヶ崎より遠い地区) 父親の職業―会社員6人、運送屋2人、工場2人、食べ物屋2人。 母親の職業―喫茶・食堂5人、会社員2人。

19(今小・今中在校生で地区別不明) 父親の職業―会社員2人、焼肉屋・カバン屋、教師。 母親の職業―焼肉屋・散髪屋・パート・内職。


(7)親とふれあう場としての食事は……

食事時は子どもにとって、一般的には、あれやこれやの話を親に聞いてもらうに都合のいい場であると思う。しかしながら、本調査に答えてくれた子どもたちにとって、家族の”団らん”はあるのであろうか。ここにも興味深い結果が数値として現われている。

一つには、「一人で食べる」と答えた子が、239(一人で複数の回答をした子どもがいる」の回答のうち43、友達と外食と答えたのが9あった。家族と食べていない、いや、食べられない子どもが52を数え、割合としても22%になる。

地区別に見れば、図Aの“働き手別分類”と同様に、01・04に特徴があることがわかる。 「一人で食事」と答えた43、外食との答9のうち、萩之茶屋地区はそれぞれ15・6と集中している。

また、「家族と食事する」との回答の中にも、アンケート用紙への書き込みを見ると、「弟と一緒に」とか、「姉がつくる」などが各グループに共通してあり、親との語らいという面でいえば、全体としてもう少し比率が下がることになる。

食事の回数について言えば、01と「遠征組」の05について食事回数の少ないのが目立ち、特に01には、一回だけと答えているものが5人もいる。

育ち盛りの子どもたちを対象とした調査であることを考えるならば、この結果は、子どもたちの健康維持の面でも考えなければならないことを示していると思われる。

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(8)おこづかいの相場は一日百円〜二百円

おこづかいの金額そのものは、一日百円〜二百円の回答が総数の40%弱を占め、大体そのあたりが平均的であることを示している。

おこづかいのもらい方は、一日単位でもらうものが多いが、週決め、月決めでというように単位毎のものもある。中には時々千円、通常五百円というものもあった。

しかし、「おこづかい」といっても、その子どもの生活情況によって持つ意味が異なっており、単純に金額の多少によって“ゆたかさ”を比較することはできない。

たとえば、ある子どもは、毎日百円をもらって、もっぱらゲームセンター、おかしなど遊びの中で消費する。しかし、別の子どもは、毎日五百円以上もらうが、そのお金で食事をした上で遊ぶことに使わなければならない。とすれば、両者の間には、百円と五百円という金額上の“ゆたかさ”とは別種の“ゆたかさ”の面において逆転現象があると言えるのではないか。

本調査において、「おこづかい」の額の単純比較によって得られるところは、さほど大きくないように思われる。

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(9)こずかいの使い方

おこづかいの使途は、下図のようにまとめられる。ゲームセンターでの聞き取りが多い割には、こづかいの使途として、ゲームセンター代の占める割合が少ないように思われるが、一人で二つ、三つと答えた子どもが半数近くいたせいだと思われる。

この項での特徴は、”その他”のところで貯金と答えた子どもが01には少なかったことだ。(もっぱら貯金だけと答えている子もいたが、大方は、おかしと貯金、ゲームセンターと貯金というように答えており、使った残りを貯金しているということのようだ。)

貯金と答えた子どもは27人いるが、そのうち萩之茶屋地区の子どもは4人にすぎない。

ちなみに、貯金の目的は、卓球の道具を買うためが2人、ファミコンカセット3人、つりに行く1人であった。

その他で貯金以外の目立つものは、小学校高学年の文房具、本であった。中学生に、喫茶店代、ブロマイドがあった。

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(10)やはり多い転居

都市部においては、親の勤めの関係や、子どもが生まれて広い住まいを求めてという理由で、転居が多いとされているが、本調査においてもその傾向があらわれているように思う。自営業者にしても、店舗と住居の分離から、転居経験者がいる。釜ヶ崎についていえば、店は釜ヶ崎の中にあるが、住まいは鶴見橋などに新しく建てられたマンションなどに移している例が増えてきている。釜ヶ崎は商売するには、多勢の労働者がいて有利だが、生活するには避けたいところとする考えがあることを示している。

そういった考えがある一方で、萩之茶屋・太子・山王などへの転居もかなりある。(もっとも、本調査が、釜ヶ崎及びその周辺で遊んでいる子どもを対象としたものであるから、それは当然の結果と言えるし、遠くへ転居したものについては、もともと把握しえないのであるが。 )













  ハ イ イイエ
01 36人 27人
02 12人 11人
03 28人 27人
04 12人 19人
05 8人 15人
19 9人 1人
99 1人 1人
106人 101人

右頁や下に示した表は、四角く囲んだ地名への転入、そこからの転出を、子どもたちの聞き取りから判った範囲でまとめたものであるが、萩之茶屋地区への“家族連れ”の転居もかなり目立つ。職業との関連でいえば、大工・鉄筋工などの職人が多いが、母子家庭あるいは父親が働けないか、父親の職業の記入のないものも多く、それぞれに事情があることをうかがわせている。

花園・太子・山王についても、転入者には日雇・職人層が多く、中に、サラリーマン、あるいはあらたに商売しに移ってきたものが散見される。転出について言えば、転入後、生活が落ち着いた時点で広い住居を求めて周辺部に移っていく傾向があるように思う。

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(11)学校での"イジメ"

学校での”イジメ”は、イジメられた子の自殺という結果から問題が表面化することが多く、その構造の研究、現場の教師による解消に向けての日常的な努力も積み重ねられているところである。本調査においても、「学校でイジメられたことがあるか」の質問を設け、子どもたち自身から聞いてみた。

しかし、「ある・ない」を答えてもらうだけの単純なもので、"イジメ”の態様について踏み込んだ質間を設けていないことから、不充分なものとなっており、読み取れることも少ないが、アンケート用紙への書き込みを頼りに、読み取れる範囲でまとめてみたい。

下の図は聞き取りの結果をあらわしたものであるが、イジメられたことがあると答えた子どもは萩之茶屋地区、山王・太子地区に多いことを示している。

アンケート用紙への書き込みを見ると、”イジメ”の態様は、男・女・中学・小学すべてにわたって、「けられた、どつかれた」という暴力的なものが多い。しかも、その暴力が「相互的な暴力―ケンカ」ではないことを、「上級生から」という補足から読みとることができる。“上位者”から“下位者”への一方的暴力が横行していると言えるだろう。

また、女の子に、「男の子から文句いわれる、つねられる、たたかれる」というものが散見される。 口による“イジメ”では、「こじきとかいわれる、へんなアダ名をつけられた、コソコソ陰口をいわれる」などがあった。

気になるのは、イジメられた体験を聞いているのに、「イジメたことある、どついた」などと、イジメたことがあるのを積極的に答えている子どもが、各地区に存在していることである。 子どもたちの“イジメ”に対する認識が、まだまだ不充分なものであることを示していると思われる。

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