D.子どもたちの希望
子どもたちのあそびとあそび場の現状を見て来たが、この現状から子どもたちは、どんなあそびをしたいと思っており、又、どんなあそび場がほしいと思っているのかをアンケートした。

(1)「どんなあそびがしたい」
表10の示すように、子どもたちが望むあそびでは、A・B共通のようである。TVゲームを含め、ファミコンをしたい子どもは、A・Bほぼ同値である。スポーツをしたい子どもは、AがBより10%多い。この10%が、Bにその他のあそびで多くなっている。

−表11−
あそび 人数 人数




野 球 10 27.0 20 21.5
サッカー 3 8.1 11 11.8
卓 球 4 10.8 4 4.3
ドッチボール 1 2.7 4 4.3
プロレス 1 2.7 1 1.1
バイクレース 2 5.4 2 2.2
バスケット 1 2.7 0 0
スポーツ 1 2.7 2 2.2
その他(注1) 0 0 5 5.4
合 計 23 62.2 49 52.7



ファミコン 7 18.3 10 10.8
ゲーム 3 8.1 11 11.8
その他(注2) 0 0 2 2.2
合 計 10 27.0 23 24.7


ごっこあそび(注3) 2 5.4 5 5.4
自然と遊ぶ(注4) 0 0 7 7.5
遊園地 2 5.4 2 2.2
その他(注5) 0 0 7 7.5
合 計 4 10.8 21 22.6
全合計 37   93  

〔注1〕プール(1):テニス(1):ボーリング(1):サーフィンヨット(1):アメリカンフットボール(1)
〔注2〕パチンコ(1):マージャン(1)
〔注3〕−A ロケットごっこ(1):おにごっこ(2)
〔注3〕一B かくれんぼ(1):おにごっこ(1):ケン玉・おもちゃ(2〕
〔注4〕海(3):つり(2):せみとり(2)
〔注5〕いろいろな所へいってみたい(2):どんな事でもやりたい(1)
    :みんなで遊びたい(1):たのしいあそび(1):なんでもいい(2)

このアンケートで気になる点は、「どんなあそびがしたいか」という問に、Aは68%の内31名(45.6%)が、Bは157名の内79名(50.3%)と、ABあわせて平均48%と約半数の子どもたちが、答えられなかったことである。この点については、後に考察したいと思う。


(2)「どんな遊び場所がほしい」

−表11−
あそび場所 人数 人数
広い場所 31 54.7 67 58.8
きれいなところ 13.0 1.8
おっちゃんのいないところ 3.7 5.3
こどもだけ 9.3 4.4
プールと遊園地 7.4 10 8.8
ゲームセンター 1.8 1.8
卓球場 1.8 0
自然の場所 1.8 0.9
スポーツセンター 0 3.5
アスレチック 0 2.6
三角公園 0 1.8
その他 (注1) 0 10 8.8
公園いらん、くさいもん 3.7 1.8
 合 計 54   114  

〔注1〕ただであそべる所・こどもの里・ゴルフ場・自由な所・家の中が広場になったらいい・学校を解放してくれ・動物をさわれる所・バイクであそべる駐車場・プロレスの出来る所・部屋がほしい(各1名)

−表12− 広い場所
幼 児 6.5 4.5
小学低学年 19.4 10 15.0
小学高学年 16 51.6 26 38.8
中学生 3.2 22 32.8
青 年 19.4 9.0
 合 計 31人 67人

スポーツをしたい子どもたちは、当然広い場所を望んでいる。(表11)広い場所を望む子どもの年齢構成−表12を見ると、A・B共小学校高学年が最も多く望んでいる。

表8を見比べてみると、Aで小学校低・高学年が一番多くこども会であそんでいるが、Bで同年代の子どもたちが多く公園であそんでいるのと同じように、Aの子どもたちも、公園であそぶことを望んでいることがわかる。

特にAの地域に於いて、広い公園という言葉の裏には、金網で囲まれた公園、遊具や植木、椅子等で意図的に広い場所を残していない公園への不満と抗議があることは確かである。また、Aの小学生は「ガラスがなくて、こけても危なくないところ」がほしいと、児童公園であるのにガラスだらけという情けない公園を嘆いている。

この項で、特に注目したいのは、次の2点である。

1点は、「きれいな所」がほしいと望んでいる子どもが、Aでは13%もいるが、Bでは、わずか1.8%である。「こどもだけ」のあそび場がほしいと答えた子どもは、Aでは9.3%もいるが、Bでは4.4%である。合計すると、Aは22.3%、Bは6.2%で、AはBの3.5倍も「きれいでこどもだけがあそべる場」を望んでいる。これは、地域の部の「釜ヶ崎がどんな街になったらいいと思うか」という質問に「きれいな街」と答えているのに通じるものである。

2点目は、「酒のんでるおっちゃんのいない所」を望んでいる子どもは、Bでは53%だが、Aは3.7%と、Aの方が少ないことである。子どもだけと答える子が9.3%もいるのに、なぜこの質問には、3.7%しかいないのだろうか。

表13は、きれいな所、こどもだけの所、酒のんでるおっちゃんのいない所のあそび場を望む子どもの年齢構成を示したものである。

−表13− きれいな所 子どもだけ 酒のんでるおっちゃんのいない所
幼 児
小学低学年
小学高学年
中学生
青 年
 合 計 7人 2人 5人 5人 2人 6人
合計27名の% 25.9% 7.4% 18.5% 18.5% 7.4% 22.2%

「酒のんでるおっちゃんのいない所」を望む子どもの言葉を拾い上げてみると、Aでは2人だけ。1人は幼児で、「おっちゃんのいない広い所」。もう1人は小学生で、「おっちゃんおってもええけど、酒のんでるおっちゃんはいらん」と話している。そして、小学生・中学生・青年には1人も、おっちゃんのいない場がほしいと表現した者はいない。

このAに対し、Bでは6人いる。幼児にはおらず、小学低学年に1人、小学高学年に4人、「おっちゃんどこかいけ」、「るんぺんのいないところ」と表現している。中学生は1人で、「若者だけが集る場所、おっさんがいない場所」と話している。

これは、Bに対し、Aが広い、きれいな公園を望んでいても、労働者を邪魔者扱いにはしていない。つまり、Aの子どもたちが、労働者とふれあうことの多い証拠であり、大人との交流があることを現わしている。

要するに、子どもたちは、酔っぱらいや、寝たりするおじさんのいないあそび場を望んでいる。それを、きれいな公園・こどもだけの公園と表現していると言っても過言でない。このことは、地域の項(一)の(C)で見た希望と合致している。酔っぱらいや失業者等がいない街であってほしいと答えた7人は、あそび場に、こどもだけ、酒のんでるおじさんのいない所と答えた7人と同じである。又、きれいな街であってほしい−4人は、きれいな所がほしい−7人となっている。

つまり、おじさんたちが大勢いることがいやなのでなく、酔っぱらっている状態の人、青カン(野宿)している状態の人がいやなのである。ここで再び、地域の項(三・四・五)を読み返して参考にしていただきたい。青年になり、彼ら自身の労働体験から、大人の労働についての理解は、少しづつ示し始めている。しかし、(五)に書かれているように、子どもたちは、なぜおじさんが酒を飲むのか、なぜ失業しているのかまでは理解出来ない。

Aの青年が、「仕事しないから、あそびほうけている人もいる。したくても出来ないという人のいることもわかる。こんな人等には、ちゃんとやったらなアカン」と、アンケートに答えてくれたが、この青年の言葉を耳にする時、なぜ酒を飲むのか、失業しているのか等を、はっきり説明し、正しい知識と理解を深める場−社会教育の場が、ぜひ、必要であることを指摘している。

そして、その学習の場は、釜ヶ崎地域内の子どもたちだけでなく、地域外の子どもたち、中んずく大人たちにも必要なものである。

というのは、先に紹介した子どもの言葉を見ても、地域外の子どもたちは、労働者を邪魔者扱いにする傾向があるからである。1983年、横浜の寿町で起きた少年たちによる日雇労働者虐殺事件は、その代表的事例である。

そして、その時報じられた各新聞社の見出しには、「浮浪者」という差別的表現が使われていた。(この実態調査以後、9月には浪速区で、ダンボール回収の仕事をしている労働者に、4・5人の少年たちが火炎ビンを投げ、死亡させた例や、10月には、大阪四天王寺の境内で、エアガンによる野宿労働者襲撃事件などが、あい次いで起こっている。

これは、大人をはじめとする日雇労働者への無知と、その無知から生まれる差別意識がその根底にある。野宿せざるを得ない日雇労働者の現状は、日本の社会機構の中から生み出されたものであって、決して個人だけの責任から生じたものではない。

実は、日本経済と社会を支えている日雇労働者が、無知と差別から、世の中の役に立たないもの、汚いもの、やっかいなものとして扱われ、福祉切捨ての一番の対象者となっているように、人が人として生きる当然の権利を奪われてしまっている。

こうした大人の差別意識が、子どもたちへ野宿者を襲うという行動を起こさせたのである。このことは、この少年たちが、「汚いものを始末しただけ、大人たちはしからないと思った」と告白しているのをみても証明されている。それだけでなく、虐殺事件後2年をふり返って報道されたニュースに横浜の商店主が、日本カモシカの例を上げ、邪魔者は殺すしかないと話していることにも立証されている。

子どもたちは、はからずもこのアンケートを通して、事実を知ることの出来る社会教育の場の必要性と重要性を教えてくれた。

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(3)「将来、どんな仕事がしたい」

最後に、子どもたちは将来どんな仕事に就きたいと思っているのだろうか。表14を参考にしていただきたい。皆それぞれに、多種多様な仕事を夢見ているようである。

特筆すれば、Aの青年が、「土方はしたくない」という希望を述べているが、この青年の話しをよく聞いてみると、彼の父親が日雇いの仕事をしており、彼は、そのことによる生活の不安定さから定職を希望しているのである。

Bの05地域に、「親父みたいになりたくない。あんなに働いても、もうからないから」というのがあるが、彼は、幼少より両親に連れられ飯場を転々とし、しばらく釜ヶ崎で生活していたが、05地域の市営住宅に転居していった子どもである。

Dの〔1〕で、「どんなあそびがしたいか」という質間に、半数の子どもたちが答えられなかったが、この項目でも、Aは25名一37.3%、Bは74名一46.3%と、平均43.6%の子どもたちが答えていない。

これは、子どもたちの生活の中で、「今日、何をしてあそぶか」という課題が、その子の主体性を確立する上に重要な位置をしめていることの証しである。

それにしても、A地域の子どもたちが、B地域の子どもたちより、10%近く多く将来に対する仕事を胸に抱いていることに注目していただきたい。

以上、Dの項のアンケートを整理・考察して来たが、子どもたちの生活を、みんなで守り合い、補い合い、助け合う大人との関わりの中で、子どもの生活権を保障する場、あそびを保障する場、教育権を保障する場が必要だと、子どもたちは教えてくれている。

−表14−
D3 将来どんな仕事 01 02 03 04 05 19 99 Total
野球選手 7人 1人 4人 4人 2人 18人
トラック・タクシーの運転手 1人 2人 1人 2人 2人 8人
教師・保母 1人 1人 1人 2人 2人 1人 8人
サッカー選手 2人 1人 1人 1人 5人
警察官 1人 2人 1人 1人 5人
レストラン 1人 1人(ラーメン) 2人(そば・すし) 1人 5人
ジュース・おかし屋 4人 4人
サラリーマン(トヨタ) 1人 1人 1人 1人 4人
喫茶店 1人 1人 1人 1人 4人
ペット・ショップ 1人 1人 1人 3人
コメディアン 1人 2人 3人
電車の運転手 1人 1人 1人 3人
塗 装 1人 2人 3人
卓球選手 2人 1人 3人
まんが家 1人 1人 1人 3人
建築(大工) 1人 1人 2人
おもちゃ屋 2人 2人
家事手伝い 1人 1人 2人
パチンコ店員 1人

1人

2人
・土方はしたくない
・看護婦
・ウエイトレス
・パン屋
・機械関係の仕事
・歌 手
・ゴムボートをつくる
・漁 師
・消防士
・花火屋
・カメラマン
・テレビタレント
13人
・まじめな仕事
・自分で人形を作って売る
・勉強したい
・溶接工
・土 方
・プラモデル設計

6人

・電気屋
・文具店
・音楽バンド
・花 屋
・コック

5人

・やくざ
・金持ちになりたい
・父さんがやっている夜勤の仕事
・パイロット
・公務員
・美容師
・銀行員
・印 刷
・らくなこと、自分のすきなこと
・自衛隊の幹部
・なにもしたくない
・親父みたいになりたくない※
10人
・本屋
・やき肉屋
・カバン屋
・家をつぐ
・かわいいお嫁さん


4人

1人づつ
41人
無 回 答 25人 9人 33人 15人 11人 4人 2人 99人
Total 67人 25人 57人 33人 32人 11人 2人 227人