地域・子ども・大人

釜ヶ崎に住む子どもたちは、自分の生活圏である釜ヶ崎に対してどんな意見ないしは感じを持っているだろうか。アンケート調査の「地域の項」(B問1〜問13)を中心に整理してみたい。

ここでは、とくに釜ヶ崎の子どもたちに焦点を絞った関係 上、さきに紹介した分類01とそれ以外を比較することにする。参考までにあらためて、その人数をここにかかげる。

01グループ(以下Aとする)68人
01以外(以下Bとする)157人

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(1)釜ヶ崎の子どもたちは釜ヶ崎が好きなのだろうか

グループ別 この街が好きか この街が嫌いか
44.1% 33.8%
61.1% 18.9%
平均 54.0% 23.5%

(注1)この問に関して「この街」の場合、Aグループは釜ヶ崎、Bグループは、自分たちの住んでいる街をさすものと理解してアンケートを整理した。
(注2)以下で使用する平均は、調査人数全体=225人の平均である。

釜ヶ崎の子どもたちは、好き、嫌い共に他地区の子どもたちよりもマイナスのイメージを自分たちの街に対して持っている。しかし、こと釜ヶ崎について言えば、釜ヶ崎の好きな子どもたちは、嫌いな子どもたちよりも、約10%強、好感を持っていることがわかる。

この好き嫌いの感じは、何が原因なのだろうか。まず年齢別に分析してみると次の通りである。(注68人中、好き、嫌いのアンケートに答えたのは、好き30人。嫌い23人。あとはノーアンサー(NA)・不明18人である)

注:(ハ)=萩之茶屋小学校 (イ)=今宮小学校 年齢構成から言えば、好きな子どもたちは比較的高い年齢層に多い。反対に嫌いな子どもは低年齢に集まっている傾向がある。

年齢構成
年齢 幼児 小学生 中学生 青年

人数 15 (ハ)9 30人
(イ)6
人数 15 (ハ)6 23人
(イ)9

好きな理由、嫌いな理由 好きな理由について、理由なしが14人(47%)と最も多く、以下友だちが多い7人(23%)、おもろいから…4人、ここに住んでいるから4人、住みやすいから1人の順になっている。特別の理由もないが、友だちが多いことは注目に価するし、住めば都式の答えも案外多い。

それに対して、嫌いと答えた子どもたちの理由ははっきりしている。
くさい、汚いが、12人と全体の50%以上あり、以下変なおっちゃんがいる5人、酔っぱらい3人、その他3人となっている。変なおっちゃん、酔っぱらいとく さい、汚ないとを合計すると実に23人中20人(87%)が、労働者(とくに失業中=アブレの労働者がいる)との関係を、釜ヶ崎が嫌いな理由にあげている。
さきほど指摘したように低年齢層の子どもたちが、現象から釜ヶ崎を見ていることがよく反映している。

しかし、釜ヶ崎が好きだと言った子どもたちにしても、釜ヶ崎がいまのままで決して良いとは言っていない。かれらの希望は次の通りである。

酔っぱらいや失業者などがいない街であってほしい(7人)し、きれいな街であってほしい(4人)ことは当然である。公園がほしい(2人)というのは、後にものべるが、釜ヶ崎には児童公園が四ヶ所もあるが子どもたちは自由に使えないことの証拠であり、遊ぶところがほしい(1人)と同様、子どもの素直な意見であろう。
他に、バクチのない街(1人)との回答は日常的に路上バクチによって、自分たちの遊びが邪魔されていることへの抗議ともとれる。

しかし、子どもの多い町(1人)、みんな平等の街(1人)やさしい人のいる街(1人)などは、子どもたちなりに直感的にとらえている結果である。ただ、2人が、「このままでいい」と答えている。その2人は青年たちで、すこし斜めにかまえた回答と読むべきではないか。ことは、簡単に行きませんよという意見とも読みとれる。

(2)子どもと労働者との交流

釜ヶ崎では、日雇労働書、しかも単身の男子労働者が居住者の大半をしめる。(大人用アンケートの項参照)子どもたちは、外に出て遊ぶときいや応なしに大人(労働者)と交流を持たざるをえない。
その証拠に、地域で知っているおじさんのいる子どもたちは、Bグループに比較して高いと言える。

(a)地域で知っているおじさん

表2−(a)
知っているおじさんがいる 50.0% 36.8%
知っているおじさんがいない 43.6% 53.2%

子どもたちは、必ずしもプラスのイメージだけで大人と交流しているわけではない。マイナスの評価をしながら、大人を見、また交流していることが、次の表(b)(c)(d)から理解できる。

(b)おじさんはこわい…

表2−(b) 平均
こわいと思う 51.5% 33.0% 37.3%
こわいと思わない 33.8% 66.4% 52.9%

(c)おじさんにおこられた……

表2−(c)
おこられたことがある 64.7% 31.8% 39.6%
おこられたことがない 32.4% 66.9% 54.2%

釜ヶ崎の子どもは、おじさんにおこられたり、こわいと思ったりするマイナスのイメージを半数以上がもっている。これはBグループに比較して約2倍以上である。

また、おこられたことがない。こわくないと回答した子どもたちも、Bグループに比べると約半分で、この対比はきわだっている。大人に対するマイナスのイメージが大きい。それはどんな大人(労働者)かは、別項で検討する。

(d)おじさんをおちょくる

子どもたちは、おじさん達をおちょくっている。弱い者に対しては攻撃的ですらある。おちょくりも、口でからかうというたあいないものから、暴力的なものまで段階もいろいろである。

表2−(d) 平均
おちょくったことがある 48.5% 33.6% 36%
おちょくったことがない 42.5% 55.9% 55%

釜ヶ崎の子どもは、その約半数がおちょくったことがあると答えている。その結果が、「おこられた」「こわいと思った」につながっている。おちょくることをプラスの面から考えると、大人に子どもが積極的にかかわっているとも評価できる。

しかし、次のような暴力的な事例を見る限りプラスとは評価できない。しかし、その場合でも、これが、子どもたちが青年になってからの体験でなく、小中学生時代の体験であることを知るとき、成長し、大人を理解するとき、そんな暴力的なこともしなくなることがわかる。

酒を飲んでいるおじさんが話しかけてきて変なことを言ったので蹴った(中1・2)。寝ている時、10円のロケット花火を尻に向けて飛ばした(青年17歳)。すべり台の上からオロナミンのびんを、下にいるおっちゃんにころがした(青年16歳)、道を聞いてきたので思いきり殴った(青年17歳)などから、「つばをかけた」(小2)、「たたいた」(小2)とともに口でおちょくったのがほとんどである。

ただ、このおちょくりも釜ヶ崎が好きか嫌いかを一つの物差にして整理してみると、一つの傾向を見ることが出来る。

NA

おちょくったこと
ある

2人 5人 3人 5人 1人
1人 9人 0人 1人 0人

おちょくったこと
ない

0人 10人 2人 2人 0人
2人 6人 1人 1人 2人

ここで注目すべきは、釜ヶ崎の嫌いな小学生たちは、好きな小学生の二倍もおっちゃんたちをおちょくっていることである。中学生ではほぼ同数。青年たちの場合、好きなものが多くなっているが、これは小中学生時代の経験であることが、調査の聞きとりの過程で確かめられている。青年になってからは、おちょくったことがない。

(3)子どもたちは大人をどうみているか

前項で、子どもたちの一定の傾向を把握できたが、もっと具体的なことで子どもたちの反応をきいてみたのが次の表(a)(b)である。

(a)大人はどんな仕事をしているか

ここで言う大人とは、子どもたちが釜ヶ崎で交流している大人(労働者)しかも、失業中の 労働者である。

子どもたちには、かれらが働いている姿は見えない。むしろ、周辺部の子どもたちが、廃品回収などの仕事をしているのを知っている。

表3−(a) 平均
仕事を知っている 25.0% 30.6% 28.9%
仕事を知らない 67.6% 59.3% 64.5%

釜ヶ崎の子どもたちは、労働者と日常的に接しているが、その労働者は、休みであったり、失業中であったりする。したがって、労働現場の労働者に釜ヶ崎の子どもたちがほとんど接することがないのは、表(b)「働いているのを見たことがあるか」によくあらわれている。

(b)働いているところを見たことがあるか

表3−(b) 平均
見たことがある 26.5% 21.3% 23.1%
見たことがない 60.3% 73.9% 64.5%

大人の労働について理解を示し、働いているところを見たことがあると回答したのは、青年たちで、小中学生は全く知らないと言っても過言ではない。

青年たちの労働への理解は、かれら自身の労働体験に基くものである。

仕事の内容として、土方、日雇、とびなどと回答した青年たち(16歳、17歳)は、いずれも日雇労働を体験している。その結果としてバラシ、鉄筋、トビ、塗装などを見たことがあるとあげている。

(4)失業中の労働者

(3)の(a)(b)表の示すように子どもたちは、働く労働者を全くと言っていいほど知らない。かれらが、一般に大人というとき、そこでイメージされるのは、失業で公園にいる労働者である。子どもたちの反応は多岐にわたるが、ある一定の傾向は読みとれる。

左の表(4〕は、日中から公園にいる大人に対する子どもたちの目である。

▼公園で寝ているおじさんたちをどう思うか

表4 好き 嫌い
かわいそう 7人 2人 9人
邪 魔 4人 2人 6人
他所に行ってほしい 3人   3人
なんとも思わない 5人 3人 8人
しゃーない 2人   2人
なぐったろーか 1人   1人
こわい 1人   1人
自分が悪い 1人   1人
乞 食 1人   1人
わからない 1人 2人 3人
いいと思う   1人 1人
いやだ、汚ない 2人 4人 6人
あかん   1人 1人
遊びにくい   2人 2人
なんでこんなことするの   1人 1人
ひまだなー   1人 1人
家のこと考えてる   1人 1人
N.A. 2人 3人 5人

釜ヶ崎の好きな子どもたちには、公園で寝る大人に対して「かわいそう」(7人)、「なんとも思わない」(5人)という一方では、「邪魔、他に行ってほしい、いやだ、汚ない」(9人)とも言う。

しかし反対に、嫌いな子どもたちは、かれらに対して「きたない、遊びにくい、邪魔だ」など否定的な子どもたちが8人いる。これは一つの対象的な見方と言えよう。さらにこの傾向は、酒を飲む労働者(大人)に対する意見としてもっとはっきり出てくる。

(5)酒を飲む労働者

子どもたちの回答を整理すると下の表の通りである。

▼お酒を飲んでるおじさん、どう思うか。
表5 好き 嫌い
知らん 4人 1人 5人
こわい 3人   3人
どうも思わない 3人 1人 4人
嫌いだ 2人 7人 9人
邪魔だ 2人   2人
うっとうしい 2人 2人 4人
好きだから飲んでいる 2人   2人
くさい 2人 3人 5人
あかんと思う 2人   2人
ケガさせられる 1人   1人
あほ 1人   1人
どっかへ行ってほしい 1人 2人 3人
いいと思う 1人   1人
金の無駄使い 1人   1人
あまり飲むな   1人 1人
人の勝手だ   1人 1人
しょうない   1人 1人
N.A. 3人 4人 7人

子どもたちの見方は、釜ヶ崎の好き嫌いにかかわらずほぼ一定している。強いてあげれば、嫌いな子が、「飲んでいるおじさんたちは嫌いだ」(7人)というのが、目立つ意見である。

しかし、一般的に点はからく、「あまり飲むなよ」とか「いいと思うよ」といったものは例外といえよう。子どもたちは、なぜおじさんたちが酒を飲むのかまでは理解できないからだ。中には、「精神病院へ行けばいい」という極論さえあったことは、紹介しておく。子どもたちはこの知識を誰から手に入れたのか。

(6)鍵のかかった公園

釜ヶ崎にある鍵のかかった金網に囲まれた公園を、子どもたちはどう見ているだろうか。

平均
遊んだことがある 60.3% 40.1% 48.4%
遊んだことがない 35.3% 46.0% 39.6%

このような結果は、釜ヶ崎以外には金網で囲まれ施鍵された公園がほとんど存在しないことを証明している。釜ヶ崎の子どもたちは、公園で遊ぶとすれば、金網と鍵の公園(花園、萩之茶屋北、中)である。

Bグループの子どもたちが、鍵のかかった公園で遊んでいるのが思ったより高いパーセントなのは意外に思うかも知れない。しかし、その要因が、同じく鍵のかかった花園北公園で遊ぶ(81.3%)花園北地域の子どもたちにあるとすれば、納得できよう。その証拠に、Bグループの中でも05グループの子どもたちは81.8%まで鍵のかかった公園で遊んだ経験など持ち合せない。公園での遊びにも釜ヶ崎の子どもたちの特色がある。

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