福祉相談部門<平成15年度報告>
平成15年度(平成15年4月1日から平成16年3月31日まで)福祉部門に相談に来た人たちについて数値データを用いながら概要を説明する。
1. 新規相談者
平成15年度の新規相談者数は1,109人にのぼる。去年度の新規相談者数が800人強であったことを考えると、大幅な増加となった。
その内訳をみると、男性1,064人(95.9%)、女性44人(4.0%)、不明1人(0.1%)となっており、男性が圧倒的大多数を占めている。女性の相談者数は、去年(21人)の約2倍となっている。女性の相談者が増加した理由として、大阪市北区中之島にあった反失連の野営地からの相談をあげることができる(ちなみに中之島の野営地から相談を受けた女性野宿生活者は16人)。
次に新規相談者の月別推移をみると図1<新規相談者の月別推移(平成15年度)>のようになる。

今までの月別相談者推移のパターンから考えると、特別清掃のカード切り替え時期であり、西成労働福祉センターの求人が減少する4月に相談者が最も多く、夏の暑い時期は減少し、また年明けの寒い時期に増えるという季節変動があった。しかし今年のパターンは例年とは異なる結果となっている。具体的には、平成16年9月(189人)、10月(122人)に著しく新規相談者数が多く、他の月の相談者数はほぼ平均化している。なぜこのような結果になったのかと考えると、「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法(平成14年8月7日公布・施行;法律第105号)」と「ホームレスに対する生活保護の適用について(平成15年7月31日;社援保発第0731001号)」に基づき、反失連(釜ヶ崎就労・生活保障制度を実現をめざす連絡会)の中之島野営地で9月から始まった野宿状態からの敷金支給生活保護申請のためであろう。
その年齢についてみると図2<新規相談者年齢分布(平成15年度)>のようになる。

最高齢が94歳、最年少は21歳、平均年齢58.9歳となっている。去年度の新規相談者の平均年齢が59.4歳であったことを考えると若干若くなっている。年齢分布は「60歳以上65歳未満の割合」が最も高く、相談者の年齢は50代、60代が中心となっている。去年度と比べて(図3各年齢層の割合)、中心年齢層に違いはないものの、最も割合が高い年齢層が「65歳以上70歳未満」から「60歳以上65歳未満」へと若くなっている。

一方、その相談内容についてみると、ほとんどが居宅保護の相談であった。8月までは65歳以上を中心に敷金なしアパート(そのほとんどが福祉アパート)に入居しその後担当区役所の保健福祉センター(旧福祉事務所)に申請に行くという従来の居宅保護、9月以降は野宿状態でハローワーク(職業安定所)に通い就労努力を行いつつ、野宿場所の担当区役所の保健福祉センターへ申請に行く敷金支給居宅保護の割合が高くなっている。それ以外にも今までどおりの相談内容、具体的には、施設入所の相談、病院受診、自立支援センター入所の方法はどうしたらいいのか、住民票の設定、…など多種多様である。
2. 1日の相談者
次に1日の相談者についてみてみる。1日の相談者とは新規相談者に加え、すでに何らかの関わりをもっていて再度相談に訪れた人たちを意味する。例えば、居宅保護申請中で継続して相談に来ている人、すでに福祉アパートに入居しており借金の督促状が届いての相談に来た人、アパートに入居しているがお酒が止まらずアルコール依存症の治療の相談に来る人、現在施設入所中であるが居宅を希望する人など、その置かれている状況も、その相談内容もざまざまであるが、最も高い頻度でかかわりをもった人で2日に1度何らかの問題をかかえて相談に来ている。
図4<1日あたりの相談者数/月別(平成15年度)>は1日あたりの相談者数を月単位で平均した人数を示している。

寒い時期から年度末にかけての時期に、1日あたりの相談者数は多くなっている(12月;26.8人、1月;28.9人、2月;31.0人、3月;34.5人)。最も多い日は2月17日の50人、年明け役所が最初に相談を開始する日(1月7日)に49人となった。これらの1日の相談者数に、毎日一緒に食事を購入する人、服薬管理をしている人、金銭管理をしている人など、おおよそ10人を加えた人数が、1日何らかの形で実際に関わっている人たちの人数となる。
3. 敷金支給居宅保護相談者
野宿からの敷金支給の居宅保護を希望して各保健福祉センター(旧福祉事務所)や市立更生相談所に申請に行った人が昨年度のべ289人いた。その結果をみると「敷金支給」された人は232人(80.2%)、稼動能力が十分に活用されていないなどの理由で「却下」された人は42人(14.5%)、「その他の処遇」(病院入院、施設入所もしくは自立支援センター入所など)は15人(5.2%)となった。
敷金支給居宅保護の申請者の年齢分布とその結果をみると図5<年齢階層別敷金支給居宅保護申請結果>のようになる。

まず申請者の年齢をみると60歳代前半(39.6%)と50代後半(29.5%)でその約7割を占めている。またその結果についてみると、40歳未満、65歳以上では全員が敷金支給されており、それ以外の年齢層では年齢が高くなるにつれて敷金支給されている割合が高くなることがわかる。(ただし、敷金支給の居宅保護を希望して相談に来た野宿生活者の中には、アルコールの問題を抱えている、金銭の問題を抱えている、入院を必要とはしないが体調的に誰かの見守りが必要など、部屋を借りて一人で生活するのが心配と考えられる場合がある。そのときは、相談者と話をしながら施設入所などをすすめる場合もある。しかしながら野宿状態で相談を継続しなければならず心苦しい限りではある。)
2004年5月末現在、敷金支給を受けた232人のうち、釜ヶ崎支援機構福祉相談部門スタッフが把握できている範囲ではあるが、就労している人は女性2人を含めた19人となっている。就労している人たちの年齢分布をみると、30代後半が1人、40代前半が1人(女性)、40代後半が2人(うち女性1人)、50代前半が7人、50代後半が4人、60代前半が4人となっている。
50代で生活保護申請受理された人が83人であるので、その13.3%が就労していることになる。
以下どのような仕事に従事しているか個別に事例を紹介する。
1. 30代後半 男性
(仕事内容)コンビニ店員
(月収)約11万円
(求職方法)飛び込み
(現在)野宿場所(K区)で生活保護を申請し敷金支給される。その1ヶ月後居住地(S区)の保健福祉センターに相談に行くも就労していないという理由で相談のみの対応をされ保護廃止。
2. 40代前半 女性
(仕事内容)製造工(人材派遣会社登録)
(月収)不定
(求職方法)求人誌
(現在)居宅保護受給中
3. 40代後半 女性
(仕事内容)製造工(おしぼり工場)
(月収)10万円以下
(求職方法)ハローワーク
(現在)息子と一緒に居宅保護受給中
4. 40代後半 男性
(仕事内容)警備員
(月収)10万円程度
(求職方法)ハローワーク
(現在)居宅保護受給中
5. 50代前半 男性
(仕事内容)警備員(12時間)
(月収)20-22万円
(求職方法)ハローワーク
(現在)勤務3ヶ月後保護辞退
6. 50代前半 男性
(仕事内容)チラシ配布
(月収)2万円
(求職方法)求人誌
(現在)居宅保護受給中
7. 50代前半 男性
(仕事内容)製造工(金属鋳型)
(月収)8万円程度
(求職方法)ハローワーク
(現在)居宅保護受給中
8. 50代前半 男性
(仕事内容)清掃員
(月収)5万円
(求職方法)ハローワーク
(現在)居宅保護受給中
9. 50代前半 男性
(仕事内容)家主の手伝い
(月収)1-3万円
(求職方法)家主の紹介
(現在)居宅保護受給中
10. 50代前半 男性
(仕事内容)ドヤ清掃員(6-11時)
(月収)約10万円
(求職方法)ハローワーク
(現在)居宅保護受給中
11. 50代前半 男性
(仕事内容)ビックイシュー販売
(月収)不定
(求職方法)-
(現在)野宿場所(K区)で生活保護を申請し敷金支給される。その1ヶ月後居住地(S区)の保健福祉センターに相談に行くが、ビックイシューの販売のみを行っておりハローワークに通うなどの就労努力がなされていないという理由で却下される。
12. 50代後半 男性
(仕事内容)警備員
(月収)12-15万円(日給月給)
(求職方法)
(現在)居宅保護受給中
13. 50代後半 男性
(仕事内容)社会福祉法人嘱託相談員
(月収)10万円
(求職方法)紹介
(現在)居宅保護受給中
14. 50代後半 男性
(仕事内容)製造工
(月収)10万円程度
(求職方法)ハローワーク
(現在)居宅保護受給中
15. 50代後半 男性
(仕事内容)製造工(部品組立)
(月収)8,9万円
(求職方法)貼り紙
(現在)居宅保護受給中
16. 60代前半 男性
(仕事内容)ビックイシュー販売
(月収)3万円程度
(求職方法)-
(現在)居宅保護受給中
17. 60代前半 男性
(仕事内容)清掃員
(月収)1.2-1.5万円
(求職方法)知人の紹介
(現在)居宅保護受給中
18. 60代前半 男性
(仕事内容)ビックイシュー販売
(月収)不定
(求職方法)-
(現在)居宅保護受給中
19. 60代前半 男性
(仕事内容)清掃員
(7‐9時半、週3回)
(月収)2.5万円
(求職方法)高齢者無料職業紹介所
(現在)居宅保護受給中
******************************
平成15年度は7月から福祉相談部門のスタッフが1人増え4人となり、9月からは野宿からの敷金支給申請が始まり、爆発的に相談者が増加した一年だった。
相談者数が増加したことにより、今まで以上に、野宿を脱してから(居宅保護を受給している、病院に入院している、施設に入所しているなどの状態)の支援が滞っている状態が続いている。病院訪問を専門にがんばっているボランティアさんが1人おり1週間に1回話をきかせてもらっている、福祉アパートの管理人から電話をもらって部屋を訪ねたりなど、「その程度」の支援しか行えていないのが現状である。ましてや、あいりん地区以外の西成区、西成区以外で生活保護を受給している人たちのアパートには、全くと言ってもよいぐらい訪問できていない。
5月はじめ、敷金支給をされた人たちの近況(保護が継続しているか、就労しているか、求職活動を行っているか、病院受診しているか、困っていることがないかなど)を教えてもらうために往復はがきを送った。ハガキが着いたと思われるその日から、直接往復はがきを持って来て近況を報告してくれる人、ハガキいっぱいにいろいろなことを書いている人、アンケートのみに回答してくれている人、訪問しないでほしいとはっきり書いている人、さまざまであった。
返事の内容は、求職活動を行いいろいろな壁にぶつかり、もれる溜息。年齢、連絡先、保証人、この3つに関することがほとんど。年齢はいかんともし難く、連絡先はプリペード式携帯電話を購入することを奨め、保証人は…。
課題と限界を感じつつ、「福祉相談部門」という名の生活よろず相談所は365日開いている。
******************************