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  • 厚労省・国土交通省との「労働政策に関する意見交換会」レポート
    2018年08月10日

    2017年2月以後、日雇労働者の社会保険にかかわり、種々の運用を、厚生労働省と国土交通省とが、相次いで変更するということがありました。

    結果として、日雇労働者が、適切に社会保障を受けることができない、建設現場への入場が制限される、等の問題が起こっています。

    もともと就労と生活が不安定な立場に置かれた日雇労働者が、更に苦しい立場に追い込まれてしまうことを見過ごすことができず、この間、各地の日雇労働組合とともに、厚労省・国交省に対し要望書を提出、署名を集めてきました。(要望書、署名については、この文章の末尾に収録しています。)

    働きかけが実り、佐藤茂樹衆議院議員に呼びかけていただき、7月31日に衆議院議員会館にて、「労働政策に関する意見交換会」を、厚労省・国交省の担当者に出席いただき、開催することができました。

    その場で、署名3,321筆を受け取っていただきました。

    意見交換会でわかったことがいくつかありました。

    まず国交省は、日雇労働者の保険加入は個人加入であり、日雇労働者の場合は保険未加入であっても、現場入場を制限してはいけないという見解を示しました。「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」を補足する資料をHPにアップすることで周知しているということでした。

    この見解が確認されたことは、とても意味のあることです。

    ただし、その内容がゼネコン・サブコンにはっきりと伝えられていないようです。2017年4月以後は、今まで働けた現場に入れなくなったとの嘆きと憤りを、釜ヶ崎ではよく聞きました。

    作業員名簿の作成例に、社会保険が個人加入者である日雇労働者の記入欄等を具体的に盛り込んで示すなど、忙しい現場においても適切な対応ができるようようゼネコンに対する指導に努めることが必要でしょう。

    厚労省の見解は、概ねのところ、会計検査院の勧告に基づいて、日雇雇用保険の運用を厳しくせざるをえないということだったと思います。ポイントの一つとして、日雇労働者に一般の雇用保険を適用する場合、それだからといって、日雇労働者で無くなったわけではなく、あくまで雇用契約上は日雇であって、制度上一般の雇用保険を適用するということがありました。そうすると不安定な就労に従事するとともに、寮での生活など不安定な居住の状態にある日雇労働者のままで、そうした不安定状態にあることへ対応した日雇雇用保険を取り上げてしまうことになります。

    たとえば、2ヶ月連続で18日以上、同一の業者で働いて、一般の雇用保険に切り替えとなった場合、日雇であるがゆえに3ヶ月目に雇用を打ち切られて、寮を出ざるをえなくなったとすると、一般の雇用保険受給の資格は満たさず、日雇雇用保険はただの掛け捨てとなり受給することができません。その結果、野宿へ至る危険が高まることとなります。

    印象的だったのは、この制度のスキマについて、厚労省の担当者が「ずいぶん頭を悩ませている」と言っていたことでした。

    国が制度の運用を変えていくとき、本来の社会保険の意義との整合性が取れなくなることは、たしかに起こりうるでしょう。

    とはいえ、日雇労働者は、人数を減らし、日本の社会においてマイナーな存在であるかもしれませんが、マイナーだから、適当に対応してよいということではなく、ひとりひとりの人間の働くこと生きることを丁寧に支えることを、国はめざさなければなりません。

    私たちも、問題の指摘にとどまるのではなく、実際に有効で、かつ野宿を防止する社会保険の形がどのようなものか、国とともに考え、実情に即した提案をしていきたいと思います。

     この意見交流会について、実際の日雇労働者の置かれた状況を伝え、国の施策を検証していくため、引き続き時宜を見て、継続していくことになりました。


    厚生労働大臣 
    加藤 勝信 様

    日雇雇用保険等に関する要望書

    日雇全協 山谷争議団
    日雇全協 寿日雇労働者組合
    日雇全協 釜ヶ崎日雇労働組合
    釜ヶ崎就労・生活保障制度の実現を目指す連絡会


    2017年7月より、日雇労働被保険者手帳(白手帳)および求職者給付の運用が大幅に変更されている。
     職業安定所窓口が、求職者給付を、原則口座振込にすると労働者に対して一方的に通知し、口座振込への移行を進めている。このことは、雇用保険法第五十一条に「日雇労働者求職者給付金は、公共職業安定所において、失業の認定を行った日に支給するものとする」、また雇用保険法施行規則第七十六条に「日雇労働求職者給付金は、公共職業安定所において、失業の認定を行つた日に、当該失業の認定に係る日分を支給する」に定められていることと大きく違えたものである。同じ施行規則第七十六条2に「職業に就くためその他やむを得ない理由のため失業の認定を受けた日に当該失業の認定に係る日分の日雇労働求職者給付金の支給を受けることができない者」等に対して求職者給付金を振込みにて行うとしている趣旨ともかけはなれた運用である。日雇労働者は、仕事に就けるか当日にならなければ分からず、就労の状況によっては、生活に困窮する場合もある。そうした事態を避けるためにある日雇雇用保険制度であるにも関わらず、口座振込により1週間から10日以上被保険者に給付が行われるまで時間がかかるということでは、これもまた、制度の目的の趣旨と違えることになる。こうした適切でない運用変更に伴って、日雇労働者が野宿を余儀なくされる危険性が明らかに高まることについて、深く再検討なされることを要望する。
     また、求職者給付を受ける資格についても、6ヶ月連続で単一の業者でしか雇用されていない場合は、一般の雇用保険に切り替えるという雇用保険法で規定のない運用に変更されたため、飯場で暮らすなど不安定な生活環境にある者が、仕事のある時は多く働きたいという意志を持っているにもかかわらず、そうできない状況が作られている。
     同様に2ヶ月連続で、18日以上同一業者で就労した場合は一般雇用保険に切り替えるという運用も、建設業界の現実においては、3ヶ月目以後の継続雇用の可能性が極めて不確定であるため、日雇労働者が1月あたり17日以内の就労に抑えることを致し方なく選択せざるをえないように仕向けることにつながっている。これは、就労意欲を妨げる中途半端な施策である。
    特に高齢の日雇労働者については、就労機会が減少し、雇い入れる雇用者が限られてくる中で、白手帳に印紙を貼って、いつか仕事に就ける時への希望をつないでいるということがあるが、就労日数においては、雇用主に保険加入の義務がない場合もあり、6ヶ月以上同一業者での就労を根拠として、一般の雇用保険に切り替えるという制度運用は、高齢の日雇労働者が置かれている実情を理解していないと言わざるをえない。
     こうした実情に即していない制度運用の変更や取り決めを早急に改め、元々不安定な建設の仕事をして暮らしをつないできた数多くの労働者が、より一層の困窮状態また野宿状態に陥ることを防ぐことを求め、下記、要望する。


    (1)日雇労働求職者給付金の口座振込を強制せず、雇用保険法第五十一条及び雇用保険法施行規則第七十六条に従い公共職業紹介所窓口にて失業の認定を行った日に支給されたい。

    (2)日雇労働求職者給付金の口座振込に移行した者が、生活状況を考慮して再び窓口支給を希望する場合の変更手続きを取り決められたい。

    (3)前二月の各月で18日以上継続して同一事業主に雇用された場合であっても、雇用の継続見込みが不確実と公共職業安定所所長が判断する場合は、2017年6月までと同様継続許可申請書を受理し、日雇雇用保険被保険者の資格を維持しうるようにされたい。

    (4)2017年2月より、厚生労働省の指示により、6ヶ月以上単一事業主に雇用された場合は、一般の雇用保険へ切り替えるとされた日雇雇用保険の運用変更については変更を中止し、上記(2)の職業安定所所長の継続許可に随時委ねることとされたい。

    (5)日給月給制など、不安定な就労形態を続けてきたと見なされる建設労働者で一般の雇用保険に加入していた者が、離職して新たにもしくは再び日雇労働雇用保険被保険者となることを希望、申請した場合は、申請日前の2ヶ月で26日以上、または半年で78日以上の就労が認められると確認された翌日より、日雇労働求職者給付金の支給を行えるよう制度を改められたい。


    (6)日雇労働者が日雇労働被保険者手帳を取得・活用しやすい条件の整備を行われたい。事業主が、日雇労働者被保険者を雇い入れようとして、雇用保険印紙購入通帳交付申請書を公共職業安定所に提出する際は、すみやかに雇用保険印紙購入通帳を交付されたい。                     

    以上

    国土交通大臣
    石井啓一様
    要望書  

    日雇全協 山谷争議団
    日雇全協 寿日雇労働者組合
    日雇全協 釜ヶ崎日雇労働組合
    釜ヶ崎就労・生活保障制度の実現を目指す連絡会


     2017年4月から、雇用・健康・年金の三保険が揃っていないと、現場入場が制限されるようになった。日雇労働者を中心に、就労の機会を失い、小さな現場の仕事や雑業的な仕事を拾うようにして、生活をつなぐ者が増加している。居所を失って、野宿に至る危険が拡大している。
     「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」によって、今年度以後は「適切な保険に加入していることを確認できない作業員については、元請企業は特段の理由がない限り現場入場を認めないとの取扱いとすべきである」と示されたためだ。
     このガイドラインに付け加えて「社会保険未加入対策に関するQ&A(よくある質問)」「『社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン』における現場入場の取扱いについて~一問一答~」が公表され、細目について確認がなされているが、日雇労働者の社会保険と現場入場の取扱いについては、はっきりと文言が確立されておらず、ガイドラインにおけるおおまかな表現と相まって、事業主の社会保険加入義務と個人加入の勧奨との間の整理が十分になされていない事態が生じている。
     日雇労働者には、生活困窮状態の者が多数含まれている。収入の大方を生活費に回さざるをえない者、すなわち個人で加入する社会保険の支払いを行うことが困難な者に対して、国は十分に配慮しなければならない。
     なんとか生活を成り立たせるだけの収入を得ている日雇労働者であっても、社会保険に加入するにあたり必須となる住民票設定等の手続きなどを不得手とする者が多いのが実情である。またすでに住民票を設定しているものであっても、長期の出張や出張の連続で社会保険加入の手続きがしづらい者もいる。そのため、社会保険加入まで期間の猶予を可能とするガイドラインの運用も必要である。
     日雇労働者であり、雇用保険及び社会保険に未加入の者は、「未だ加入していない」状態にすぎない。就労することにより生活の安定が確保できれば、雇用保険及び社会保険に加入する可能性がある。しかし、ガイドラインにより就労の機会が制限されると、不安定就労の下にある日雇労働者で雇用保険及び社会保険未加入の者は、そのまま未加入の状態を続けなければならないことになる。
     また、未だ末端の業者が法定福利費の確保をしづらい現実において、技能労働者であり、ゼネコンやサブコンが工事のために必要とする人材である労働者については、法定福利費の削減を意図して、一人親方へ転換することを勧奨することも実際に行われている。常傭化すべき労働者を一人親方とし、日雇労働者で社会保険の揃わないものを現場に入場させず就労機会を奪う結果になっていることは、将来の若年者の建設業への入職を目的とするガイドラインの前提と乖離する結果となっている。
     建設産業への国民の信頼を守り、質の高い建設サービスを今後維持していくためにも、建設産業の末端で働く労働者の適正な就業環境と就労機会を奪う施策とならないよう、「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」の改定及び柔軟な運用と、高齢日雇労働者の就労機会を増やす制度の創設等を求め、以下要望する。

    (1)作業員の管理のため現場入場で使用する作業員名簿の運用において、日雇労働者でありかつ雇用保険及び社会保険に未加入の者が現場入場を妨げられないよう、日雇労働者であることを証明する書類(事業主と日雇労働者との雇用契約書等)の提出をもって社会保険記入欄が未記入であっても可とする内 容をガイドラインに明記されたい。またガイドラインの別紙3「作業員名簿の作成例」にも同様の主旨を明記されたい。

    (2)働き方改革は、高齢の日雇労働者の持つ能力の活用についても当然及ぶべきことであるため、国土交通省直轄工事において、現状就労機会が少ない高齢日雇労働者が、その体力や技術に応じて、働き続けることができるよう、業務の切り出しを行い、就労機会を増やすようゼネコンに指導されたい。職業安定所や日雇労働者が多く集まる地域に設置された無料職業紹介所から高齢日雇労働者を吸収する制度を設けたゼネコンには、入札時の審査で加点される制度を構築されたい。また、そのことによって、日雇労働者の社会保険加入を推進されたい。

    (3)一人親方、専門工事企業の技能労働者、日雇労働者は、請負、雇用、雇用契約の種類等の区別により別々の者として定義されているが、未だ改善に向かってはいない重層下請構造においては、別々の存在ではなく重なり合い行き来している実情がある。「適切な社会保険の加入促進を通じた雇用と請負の明確化」を『建設産業政策2017+10』で謳っているものの、具体的な方策については、実情を踏まえて検討の継続が必要となるため、日雇労働者の労働組合との定期的なヒアリング・勉強会を行われたい。

    以上

    [署名]
    国土交通大臣 様
    厚生労働大臣 様

    日雇雇用保険等に関する要望書

    2017年7月より、日雇労働被保険者手帳(白手帳)および求職者給付の運用が大幅に変更されました。
     求職者給付を、職業安定所窓口にて、原則口座振込とすると知らされました。日雇労働者は、仕事に就けるか就けないかがその日にならなければ分からないため、一日一日の生活をつないでいくのが精いっぱいという状態です。口座振込では1週間から10日以上振込に時間がかかると聞いています。これではたちまち生活に窮してしまいます。なかには、新たに野宿にいたる者も出ることでしょう。
     また、求職者給付を受ける資格についても、6ヶ月連続で単一の業者でしか雇用されていない場合は、一般の雇用保険に切り替えるという雇用保険法で規定のない運用が行われようとしているため、飯場で暮らすなど不安定な生活環境にある者が、仕事のある時はたくさん働けるよう願っているにもかかわらず、そうできない状況が作られようとしています。
     この4月以後は、雇用保険、健康保険、年金にすべて加入している労働者でなければ、建設現場に入れないという締め付けが、国土交通省の指針に従ったゼネコンによって進められています。このことによって、働きたい気持ちを持ちながら、あきらめざるをえないことになり、社会保険について問われない小さな現場仕事をみつけることがとても難しいため、生活がひっ迫せざるをえません。
     こうした実情に即しきれない制度運用の変更や取り決めが行われているため、元々不安定な建設の仕事をして暮らしをつないできた数多くの労働者が、より一層の困窮状態に陥ることが必至です。そのためここに署名をし、実情に即した制度運用が行われるよう右に要望をいたします。
           署名呼びかけ団体
    山谷争議団
    寿日雇労働者組合
    釜ヶ崎日雇労働組合
    釜ヶ崎就労・生活保障制度の実現を目指す連絡会




    (1)日雇労働求職者給付金の口座振込を強制せず、雇用保険法及び雇用保険法施行規則第七十六条に従い公共職業紹介所窓口にて失業の認定を行った日に支給されたい。

    (2)前二月の各月で18日以上継続して同一事業主に雇用された場合であっても、雇用の継続見込みが不確実と公共職業安定所所長が判断する場合は、2017年6月までと同様継続許可申請書を受理し、日雇雇用保険被保険者の資格を維持しうるようにされたい。

    (3)2017年2月より、厚生労働省の指示により、6ヶ月以上単一事業主に雇用された場合は、一般の雇用保険へ切り替えるとされた日雇雇用保険の運用変更については変更を中止し、上記(2)の職業安定所所長の継続許可に随時委ねることとされたい。

    (4)日給月給制など、不安定な就労形態を続けてきたと見なされる建設労働者で一般の雇用保険に加入していた者が、離職して新たにもしくは再び日雇労働雇用保険被保険者となることを希望、申請した場合は、申請日前の2ヶ月で26日以上、または半年で78日以上の就労が認められると確認された翌日より、日雇労働求職者給付金の支給を行えるよう制度を改められたい。

    (5)ゼネコンが受注した建設現場において、雇用保険・健康保険・年金が揃わない労働者が、就労機会を奪われないよう、本人からの申請があり、また雇用主の社会保険加入忌避と認められない場合は、一定の緩和措置が行われるよう「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」の付帯的な内容として、ゼネコン以下の建設業者に指針を示されたい。

    (6)(5)については、就労機会が少なく不安定な生活形態に置かれており、(2)及び(3)により日雇労働者として認められる高齢者については、十分な配慮を行われたい。

    (7)日雇労働者が日雇労働被保険者手帳を取得・活用しやすい条件の整備を行われたい。事業主が、日雇労働者被保険者を雇い入れようとして、雇用保険印紙購入通帳交付申請書を公共職業安定所に提出する際は、すみやかに雇用保険印紙購入通帳を交付されたい。                     

    以上